アンチェロッティが得意とする“微調整”が効果を発するのは!?

どんなクラブ事情や選手の顔ぶれであっても、それに適応して好チームを作り上げ、結果を残してきた“バランスの達人”アンチェロッティ。その柔軟性が、今のところは仇となっているようだが……。 (C) Getty Images
ペップ・サッカーの名残がありながら、カルロらしさがアクセントになっているなら何の問題もないが、ペップ・サッカーの遺産に頼り、カルロらしさはプラスに作用していないというのが現状ではないだろうか。
PSV戦、ミュラーが語ったように、30分までのバイエルンは素晴らしいサッカーを見せていた。マークの受け渡しがうまくいかない相手の裏を突き、何度も惜しいチャンスを作り出した。
ある程度の実力のチームには、このままでも十分に勝ち切るだけの力はある。だがそれは、抱える選手層を見れば当然の範疇に入るのではないだろうか。
問題は、上乗せの部分である。例えばアンチェロッティはビルドアップ時、両SBにワイドに開いて高い位置をとらせ、インサイドハーフにはCBのそばでサポートさせている。ボールを奪われた際には、そこで守備の起点を作り、カウンターを阻止する目算だ。
だが、肝心な攻守の切り替え時に、キミッヒ、チアゴ、シャビ・アロンソの3人がフィルターの役割を果たし切れていないことが多いのは、気がかりである。PSVの場面でも、中盤でプレスに行ってあっさりとかわされ、一気にカウンターを受けている。
アンチェロッティは「攻撃ばかりに目が行き過ぎている時間帯がある」と指摘していたが、ならばハビ・マルティネスやレナト・サンチェスといった、守備でもっと力を出せる選手を併用することも必要だし、それがチームに対する分かりやすいメッセージになるのではないだろうか。
攻撃陣の個々の力を使い切るためには、彼らが力を発揮しやすいように状況整理をすることが大切だ。
就任以来、アンチェロッティは「大きな変化はいらない。私はディテールに少しの色を加えるだけ」という話をよくしているが、まさに今のバイエルンに必要なのは、細部の整理のはずである。
もちろん、完成されたチームに彩りを加えるのは、口で言うほど簡単なことではない。微調整がチームにプラスの力をもたらすためには、全体のプレー構成にも着手する必要が出てくるはずだからだ。
経験豊富なアンチェロッティがこの先、どのような手を打って、最適なチームバランスを見つけるか、要注目である。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。
PSV戦、ミュラーが語ったように、30分までのバイエルンは素晴らしいサッカーを見せていた。マークの受け渡しがうまくいかない相手の裏を突き、何度も惜しいチャンスを作り出した。
ある程度の実力のチームには、このままでも十分に勝ち切るだけの力はある。だがそれは、抱える選手層を見れば当然の範疇に入るのではないだろうか。
問題は、上乗せの部分である。例えばアンチェロッティはビルドアップ時、両SBにワイドに開いて高い位置をとらせ、インサイドハーフにはCBのそばでサポートさせている。ボールを奪われた際には、そこで守備の起点を作り、カウンターを阻止する目算だ。
だが、肝心な攻守の切り替え時に、キミッヒ、チアゴ、シャビ・アロンソの3人がフィルターの役割を果たし切れていないことが多いのは、気がかりである。PSVの場面でも、中盤でプレスに行ってあっさりとかわされ、一気にカウンターを受けている。
アンチェロッティは「攻撃ばかりに目が行き過ぎている時間帯がある」と指摘していたが、ならばハビ・マルティネスやレナト・サンチェスといった、守備でもっと力を出せる選手を併用することも必要だし、それがチームに対する分かりやすいメッセージになるのではないだろうか。
攻撃陣の個々の力を使い切るためには、彼らが力を発揮しやすいように状況整理をすることが大切だ。
就任以来、アンチェロッティは「大きな変化はいらない。私はディテールに少しの色を加えるだけ」という話をよくしているが、まさに今のバイエルンに必要なのは、細部の整理のはずである。
もちろん、完成されたチームに彩りを加えるのは、口で言うほど簡単なことではない。微調整がチームにプラスの力をもたらすためには、全体のプレー構成にも着手する必要が出てくるはずだからだ。
経験豊富なアンチェロッティがこの先、どのような手を打って、最適なチームバランスを見つけるか、要注目である。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。