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「卒業後は一流企業に入るものと…」J創成期の“元浦和レッズ戦士”が慶大教授へと転身を遂げるまで。教え子・武藤とのミラクルな秘話も

カテゴリ:Jリーグ

河野 正

2024年12月16日

慶大ソッカー部を二期に渡って率い、優秀なJリーガーたちを輩出

2015年夏、欧州挑戦が決まった武藤(右)の国内ラストゲームに駆けつけた。(C)SOCCER DIGEST

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 甲府在籍時から週に1日、非常勤講師として慶大体育研究所に勤務。引退したらプロのサッカー指導者になろうとしたが、ソッカー部元監督の小森秀二から大学教員を勧められたのがきっかけで、教育と研究の道をセカンドキャリアに選んだ。

 大学教員になるには大学院で学ぶ必要があり、引退した95年は順天堂大学大学院に週3回通い、翌年の受験に向けて必須項目を身に付けた。須田は「小学生からずっとサッカー漬けじゃないですか。ほかに何もやれなかったのでこの1年でいろんなことを体験し、夏休みには米国で英語の勉強もしたんです」と話す。

 96年に順大スポーツ健康科学研究科大学院に合格。98年3月に修了すると、4月からは3年契約で慶大体育研究所の“嘱託助手”となり、2002年からは“専任助手”として2年間勤務した。

 順大大学院の頃からフットサルに関わり、JSLのフジタや日産自動車で活躍したマリーニョの監督時代には日本代表に選ばれ、代表コーチや日本フットサル連盟理事なども歴任。「当時は選手層が薄かったので、サッカー経験者で時間に余裕のある自分に声が掛かった。アジアカップをはじめ、海外での試合と講習会によく参加しました」と振り返る。

 04年1月、藤口の下命を受けソッカー部監督に就任。4月から専任講師となったが、毎日グラウンドに出て指導した。暁星高の恩師、林義規と藤口の教えを参考にし、「教本も読んだが、ふたりの長所をミックスして戦術を練った。チーム作りは在籍する選手の個性を生かして柔軟に取り組みました」と解説。06年12月まで指揮を執ったが、実際には03年後期からコーチとして携わり、前期最下位のチームを立て直した。

 07年9月から2年間、慶大の派遣留学制度を利用し、オランダの体育教師育成校であるCIOSで主に15~19歳までの育成システムを研究。「現代サッカーの根源はオランダにありますからね。4-3-3システムを学び、いい勉強をさせてもらいました」と述べ、同時に欧州サッカー連盟(UEFA)公認の指導者資格B級も取得した。
 
 第二期ソッカー部監督は11年1月からで、ふたたびOBに指名された。須田への信頼はよほど厚いようだ。4月には准教授に就任し多忙な生活に戻ったが、「強化することが宿命だと覚悟を決めました」と今度は7シーズンに渡って指揮を執った。

 1年目はポジショニングなどオランダで習得した知識がものをいったうえ、清水エスパルスに加入したMF河井陽介、ファジアーノ岡山に進んだDF田中奏一ら4年生に好人材を多数擁したことで、関東大学リーグ1部で3位と躍進。全日本大学選手権でもベスト4に駆け上がった。

 ただこれは前任の李宇韺監督が築いたチーム。1年生から指導し、ふたたび1部リーグ3位に押し上げた5年目こそ須田の力が発揮されたと言える。「後期の快進撃はすごかった」とニンマリすると、「監督2期目の一番の思い出は武藤との出会いですね」と、嬉しそうに元日本代表でヴィッセル神戸の武藤嘉紀の名を挙げた。

 FC東京U-18にいた武藤は、慶応義塾高3年で2種登録選手としてトップチームに登録されたが、卒業後は慶大に進学しソッカー部に入った。須田が再登板して1年目だ。1年生から起用したが、前期リーグで左膝半月板を故障し半年離脱。「あれがなければ優勝できたと思う。ものが違いましたよ」と悔しがる。

 13年6月の中央大との関東大学トーナメント準決勝だ。弾丸シュートを3本決めた武藤に舌を巻き、「もう慶応じゃない。日本サッカーのためにもFC東京に行かせないといけない」と痛感し、3年生での退部と翌年のプロ入りを勧めた。

 だが慶大は降格の恐れがあり、「残さなかったら来年もやってもらうと伝えたら、普段から懸命にプレーしていた男がいつも以上に気合を入れ、次から次へと得点してくれた。すごかったなあ。おかげで奇跡的に残留できたんですよ」と笑った。
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