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【現地コラム】カルチョでは異例、降格決定後も鳴りやまない拍手――。フロジノーネが胸を張ってセリエAを去る

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2016年05月12日

新戦力はすべて「タダ」で獲得した。

降格が決まったにもかかわらず、フロジノーネ・サポーターはチームに惜しみない拍手を送った。セリエAでは極めて珍しい光景だ。(C)Getty Images

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 実際、今シーズンのフロジノーネは、ピッチ上の結果にかかわらず賞賛に値する戦いぶりだった。
 
 2シーズン前はレーガ・プロ(3部)で戦っていた弱小クラブは、2シーズン連続の昇格でセリエA初参戦を果たしたとはいえ、メンバーの大半がトップリーグでのプレー経験を持たないセリエBからの「持ち上がり」。昇格に合わせてチームを補強するだけの財政的余力はなく、今シーズン加入した新戦力はすべてフリートランスファーかレンタルだった。
 
 登録メンバーの市場評価額合計はリーグ最下位。25人合わせてもポール・ポグバ(ユベントス)ひとりの半分にも満たない3100万ユーロ(約43億4000万円)でしかなかったのだ。
 
 そんなチームが、セリエA最年少(38歳)のロベルト・ステッローネ監督の下、ただ受けに回って相手の攻撃を耐え忍びカウンターを狙うのではなく、積極的なプレッシングから鋭い速攻を仕掛けるダイナミックなサッカーを披露。リーグ最多の72失点を喫しながらも常に勇気を持って前に出るスタイルを最後まで貫いた。
 
 ゴール裏のファンが送った拍手には、限られた戦力で最後まで堂々と戦い抜き、胸を張ってセリエAの舞台を去るチームに対する、ともに戦った仲間としての誇りと感謝、そして連帯の気持ちが込められていた。
 
 さらに印象的だったのは、フロジノーネの選手たちに続いて、この日戦ったサッスオーロの選手たちもホームチーム側のゴール裏に歩み寄り、賞賛の拍手を交わし合ったことだ。
 
 サッスオーロのエウセビオ・ディ・フランチェスコ監督は、試合後にこう語っている。
 
「フロジノーネの観客の振る舞いはイタリアの、そして世界のサポーターにとっての模範だと思う。結果が出ないというだけで、ウルトラスに罵倒を受けたり、ユニホームを脱ぐように強制されたりするのが当たり前になっているなか、チームの努力、常にベストを尽くす姿勢に賞賛をおくった。素晴らしいことだ。私たちが彼らのところに行って拍手をしたのも、純粋にそうしたい気持ちに駆られたからだ」
 
 フロジノーネというクラブにとっても、そしてサポーターにとっても、セリエAという大舞台で初めて過ごしたこの1シーズンは、歴史的な一大イベントであったと同時に、未来に向けて実り多い貴重な経験となったのは間違いない。
 
 1年後かそれとも数年後かに、再びセリエAの舞台に戻って来るためにも、この経験は大きな力になるだろう。
 
文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
 
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