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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の六十八「全てのプレーは“原則”に照らし合わせて厳格に評価すべき」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年04月28日

「守備の基本ができている」ことと「攻撃参加」は別物である。

アトレティコ・マドリーのSBフィリペ・ルイスは元々、優れた攻撃の選手であり、その能力を現在も活かしているが、彼が重宝されるのは、まず守備面で機能しているからである。 (C) Getty Images

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「ラインを司るのは、常に中央の選手でなければならない」
 
 それは揺るぎない、ひとつのルールである。
 
 小川は知ってか知らずか、忠実にそれを守るかたちになった。GKも、この場面ではほぼ成す術がない。
 
 このケースでラインを突破されたのは、コントロールを誤った森重の責任である。完全にフリーで裏にボールを入れる中村に対し、カバーリングに十分なバックステップを踏んでいない(この点は、丸山も同罪だろう)。なおかつ、オフサイドにもかけられなかった。
 
 しかし、徳永も大きな過ちを犯している。彼は森重よりもさらに後ろにポジションを取っており、緩慢かつ不注意な動きで原則を破り、ラインを乱していた。
 
「ドンマイ」
 
 この場合、魔法の言葉は使うべきではない。森重や徳永が優れた選手であるのは明らかだが、エラーそのものは糾弾するべきだ。
 
 無論、原則には常に、例外、特例がある。
 
 例えばSBは、ラインを破ってくる選手に対応する場合、どうしてもついて行かざるを得ない場合がある。ダイアゴナルのランニングで中央に入られると、真ん中のDFは対応が遅れてしまう。そこで、SBはオフサイドラインが崩れるのを覚悟で、ラインの最後尾となって絞って守り、攻撃を断ち切る。
 
 このように、必ずしも原則が当てはまらないケースがあるのは確かだ。しかし、守備には常に原則があることも忘れてはならない。本来はそれを基に、DFは評価されるべきだ。
 
 さもなければ、SBを評価する時、「積極的な攻め上がり」が第一に来てしまう。これでは守備の深みが増すことはない。攻撃参加は大きなプラスポイントではあるが、守備の基本ができているかどうかとは、別のところにあるのだ。
 
文:小宮 良之(スポーツライター)
 
【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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