もっとも懸念される「弱点」は…
ピケの後継者に相応しい――それは守備だけでなく攻撃の局面、ビルドアップへの貢献度についても言えることだ。アラウホは例えばエリク・ガルシア(ジローナ)のように、MF並みのビルドアップ/ゲームメーク能力を備えているわけではない。しかし右足から繰り出すパスはタイミング、精度ともに十分であり、最終ラインでのパス回しから敵プレッシャーラインを越えて局面を進める縦パスまで、バルセロナの生命線である後方からのビルドアップの質を保つだけのレベルにある。
ただし、ショート、ミドルのパスと比べて、大きなサイドチェンジなどロングパスは、それがベストの選択肢であるにもかかわらず躊躇する場面が一度ならず見られた。ここはより積極的にトライすること、そしてその技術に磨きをかけることが求められる部分だ。
ビルドアップにおけるアラウホの美点は、前方にスペースがあれば躊躇なくドリブルで持ち上がり、一気に局面を進められるところ。SBとしてだけでなく、CBとしても持ち前の推進力を遺憾なく発揮し、時には対応に飛び出してきた敵MFに対してドリブル突破を試みることすらある。こうした攻撃の能力をさらに引き出し活かすという観点に立てば、アラウホにとって最も適したポジションは、4バックのSBでもCBでもなく、3バックの右CBだろう。守備の局面では純粋なCBとして振る舞い、攻撃の局面ではビルドアップへの貢献だけでなく、状況に応じて積極的に敵陣に進出してアタッキングサード攻略にも絡んで行く。ただバルセロナの場合、シャビ監督が4-3-3を捨てて3-4-3など3バックのシステムを基本に据えるとは考えにくいため、実現性は低そうだ。
ただし、ショート、ミドルのパスと比べて、大きなサイドチェンジなどロングパスは、それがベストの選択肢であるにもかかわらず躊躇する場面が一度ならず見られた。ここはより積極的にトライすること、そしてその技術に磨きをかけることが求められる部分だ。
ビルドアップにおけるアラウホの美点は、前方にスペースがあれば躊躇なくドリブルで持ち上がり、一気に局面を進められるところ。SBとしてだけでなく、CBとしても持ち前の推進力を遺憾なく発揮し、時には対応に飛び出してきた敵MFに対してドリブル突破を試みることすらある。こうした攻撃の能力をさらに引き出し活かすという観点に立てば、アラウホにとって最も適したポジションは、4バックのSBでもCBでもなく、3バックの右CBだろう。守備の局面では純粋なCBとして振る舞い、攻撃の局面ではビルドアップへの貢献だけでなく、状況に応じて積極的に敵陣に進出してアタッキングサード攻略にも絡んで行く。ただバルセロナの場合、シャビ監督が4-3-3を捨てて3-4-3など3バックのシステムを基本に据えるとは考えにくいため、実現性は低そうだ。
ここまで見てきた通り、アラウホは攻守いずれの局面においてもあらゆる状況で高いパフォーマンスを発揮できるワールドクラスのCBに成長したと言っていい。さらなる「伸びしろ」としては、すでに見た高難易度の状況における守備の個人戦術、ロングパスに加えて、リーダーシップも挙げておくべきだろう。
バルセロナではピケ、ウルグアイ代表ではディエゴ・ゴディンというカリスマ的なリーダーの下でプレーしてきたこともあってか、ピッチ上での振る舞いはまだ実直な一兵卒という側面が強く、自らが先頭に立ってチームを引っ張る、困難な状況の中で責任を引き受け、周囲を鼓舞するといった姿は見られない。その点も成長が期待されるところだ。
今後のキャリアを展望するうえで、最も懸念される「弱点」として挙げられるのは、本格デビューから現在まで毎年、筋肉系の怪我で中期の離脱を繰り返していること。バルセロナのように1年を通してほぼコンスタントに週2試合ペースが続くメガクラブにおいて、トップコンディションでプレーできるのが長くてシーズンの3分の2程度というのは、絶対的な大黒柱として信頼を置くには不十分だ。
筋肉系の故障が頻発する原因としては、遺伝的な形質以外にもコーディネーションや姿勢、バランスから食生活まで、さまざまな要因が考えられるが、何とかこのネガティブな傾向を克服し、ワールドクラスのCBとして長く充実したキャリアを送ることを祈りたい。
文●ロベルト・ロッシ
翻訳●片野道郎
【著者プロフィール】
ロベルト・ロッシ/1962年3月24日生まれ。MFだった選手時代は名将サッキ(元イタリア代表監督)や元日本代表監督のザッケローニに師事し、99年に引退。01 ~07年はラツィオやインテルなどでザッケローニのスタッフ(コーチ兼スカウト)を務める。その後は監督としてイタリアの下部クラブや女子チームなどを渡り歩き、23年夏からルッシ(イタリア5部)を率いる。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年10月5日号より転載
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今後のキャリアを展望するうえで、最も懸念される「弱点」として挙げられるのは、本格デビューから現在まで毎年、筋肉系の怪我で中期の離脱を繰り返していること。バルセロナのように1年を通してほぼコンスタントに週2試合ペースが続くメガクラブにおいて、トップコンディションでプレーできるのが長くてシーズンの3分の2程度というのは、絶対的な大黒柱として信頼を置くには不十分だ。
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文●ロベルト・ロッシ
翻訳●片野道郎
【著者プロフィール】
ロベルト・ロッシ/1962年3月24日生まれ。MFだった選手時代は名将サッキ(元イタリア代表監督)や元日本代表監督のザッケローニに師事し、99年に引退。01 ~07年はラツィオやインテルなどでザッケローニのスタッフ(コーチ兼スカウト)を務める。その後は監督としてイタリアの下部クラブや女子チームなどを渡り歩き、23年夏からルッシ(イタリア5部)を率いる。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年10月5日号より転載
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