「W杯後の未来に期待していたから、しんどさはあった」権田修一の最大の挫折とは?

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2023年09月04日

自己満足に浸っていては成長などない

練習の重要性を十二分に理解している権田。写真:サッカーダイジェスト

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 権田選手の言葉がシビアな現実を映し出す。よくその状態で、プロフットボーラーを続けられたなと。当時現役引退も考えたという彼だが、2016年のSVホルンへの期限付き移籍をきっかけに復調。2018年には日本代表に復帰し、カタール・ワールドカップのドイツ戦で好セーブを連発するなど、「よくここまで戻ってきた」との感情が込み上げる。その感情を素直に伝えると、権田も笑顔で「自分でもそう思いますよ」と返してくれた。

「この前エスパルスとFC東京がクラブユースの準決勝で戦った時、昔から知っているFC東京の育成スタッフにも言われましたからね。よく頑張っているねって。(オーバートレーニング症候群を患った)当時のことを知る皆さんにいつもそんなふうに言ってもらえると、僕もようやっているなって(笑)、そう思っちゃいます」

 本当に、よく戻ってきた。

「当時を知るライターさん、東京中日新聞の松岡さん、スポニチの垣内とか、みんな声をかけてくれる。松岡さんなんてワールドカップの時、『泣きそう、やばい』って言っていましたからね(笑)。自分がヒヨッコの頃から見ている方からしたら、よく戻ってきて、よくやっている、そうなりますよね」

 その通り。プロフットボーラーとして、よくここまで。中途半端に仕事を投げ出さず、ここまでやってきたメンタルは本物。だから、権田選手のことを昔から「ストイック」と思っているが、本人にその自覚はない。「権田選手はストイックですよね?」と訊いても、「ストイックってなんですか? 定義が分からない」と言われて終わりというやり取りを何度かした記憶がある。
 
 そのネタをきっかけに「ストイックの話題に触れると答えてくれないですからね(笑)」と振ると、権田選手は意外にも「いやいや、その辺は大人になって。話せるようになっているかもしれません」と返答。どういう心境の変化だろう?

「僕の中で答がひとつあって。ストイックか否かを決めるのは、僕以外の人ってことです。自分はストイックにやっています、頑張っていますって説得力がないんですよ。その人が一生懸命にやっているか、そこを判断できるのは他人です。自分じゃなくて。だから、誰かに『ストイックですね』と言われたら、そうなのかなと思えるようになりました。成長ですね(笑)」

 ライターもそうだ。自分の書いた文章を「どうだ、良い作品だろう」と自慢しても意味はない。読み手がどう評価するかが全て。自己満足に浸っていては成長などない。これはどんな仕事にも共通して言えることではないだろうか。

「僕らはそれが結果。プロサッカー選手なので。練習が終わって毎日飲み歩こうが、試合で結果さえ出してくれれば全然構わない。そういう世界です。飯も食わずに朝まで飲んで、それでもピッチに立てば3点取ってくれる選手ならノーストレスです。ただ、今はサッカーもよりフィジカル的になって、いろんな準備が必要なので、非現実的な話じゃないですかね。メッシ、ロナウド、エムバペ、ハーランドも能力に頼らず厳しいトレーニングをこなしています。今はそれがノーマルなので、毎日飲み歩くような選手はさすがにいないでしょう」

 権田選手は加えて、こう言った。

「そもそも、そういう選手に期待なんてしない」 それはそれでノーストレスということだろう。

<パート5に続く>

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

<選手プロフィール>
権田修一(ごんだ・しゅういち) 1989年3月3日生まれ、東京都出身。187センチ、84キロ。さぎぬまSC-FC東京-15-FC東京U-18-FC東京-ホルン(オーストリア)-鳥栖-ポルティモネンセ(ポルトガル)-清水。ワールドカップ参戦2回(14年、22年)。12年のロンドン五輪にも出場と、国際経験が豊富。Jリーグ屈指の実力者で、一切の妥協を許さないスタンスはプロの鑑と言える。


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