「あとは決めるだけ」だったU-23日本代表。ブレイクスルーを引き出した要因とは?

カテゴリ:日本代表

飯尾篤史

2016年01月25日

チームを活性化するスーパーサブの存在とローテーション采配。

3戦目以降はスーパーサブとして起用されている浅野。その投入で試合展開を劇的に変化させることも可能だ。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

画像を見る

 得点が奪えるようになった理由のひとつは、カタール・UAE遠征にはいなかった久保裕也、南野拓実、浅野拓磨、豊川雄太といったアタッカーの合流だ。
 
 そのなかで今大会において実際にゴールを奪ったのは、久保と豊川のふたりだが、久保がいなければ、鈴木はエースの重圧をひとりで背負うことになっていたし、タイとの2戦目で鈴木がゴールを奪えたのは、その直前まで浅野と豊川が決定的なシュートを放ち、マークが分散していたおかげでもあっただろう(とはいえ、鈴木のゴールは素晴らしかったが)。
 
 また、タイ戦でゴールを決めた矢島慎也が「拓実は本当に巧い。見習うところは多いけど、負けたくはない」と言ったように、南野の存在が矢島のハートに火を付けた面もあったはずだ。
 
 浅野や豊川らスーパーサブの存在は、ゲームの進め方にも大きな影響を与えている。彼らが控えているからこそ、先発の選手たちは劣勢を強いられても相手の運動量が落ちるまで我慢ができる。そこまで耐えれば、彼らが決めてくれるという信頼があるからだ。
 
 そうした理想的な展開となったのが、延長戦で3ゴールを奪って仕留めたイラン戦だったのだ。
 
 チームを活性化させているもうひとつの理由は、指揮官のローテーションによる采配である。グループステージでメンバーをローテーションさせたばかりか、負ければ終わりとなる準々決勝でも、メンバーを入れ替えることにためらいはなかった。
 
 イラン戦ではザルツブルクに所属する南野拓実は最後までピッチの外から戦況を見守った。最初にピッチを去ったのは、ヤングボーイズでプレーする久保裕也だった。アンタッチャブルな存在はなく、誰かに頼るチームではない。この先、誰もスタメンは保証されていない――それが選手全員のモチベーションと競争意識、一体感を高めている。
 
 2試合連続してスタメンに抜擢されたオナイウ阿道が言う。
「誰がスタメンになるか分からない。僕はいつでもいけるように準備していたし、みんなも誰が出てもしっかりやれていたと思います」
 
 手倉森監督は大会が始まる前、こんな風に言っていた。
「このチームは国際経験の少ない集団だから、勝ちながら経験を積んでいくしかない」
 まさに今、U-23日本代表は試合を追うごとに逞しさを増している。
 
取材・文:飯尾篤史(サッカーライター)
 
【関連記事】
【リオ五輪予選】運命の準決勝・イラク戦、手倉森監督は「リベンジしたい」と再戦に燃える
【リオ五輪予選】迷いを掻き消す2ゴール。準々決勝で10番・中島翔哉がついに輝きを取り戻す
【J1・J2プレシーズン情報2016】千葉×江戸川大など|練習試合、PSMの日程・結果を総まとめ[2/18更新]
中村俊輔、遠藤保仁、小野伸二…を超える「最も衝撃を受けた」と鈴木啓太が引退記者会見で明かした“意外”な選手とは?
【金田喜稔がイラン戦を斬る!】アジアレベルの相手に勝利したにすぎない。世界を目指すなら内容の改善は不可欠だ
【リオ五輪予選】FC東京でつながる“3世代の10番”。北京五輪世代の梶山陽平とロンドン五輪世代の東慶悟が中島翔哉へ送ったアドバイス

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ