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小江戸川越のサッカーチームから生まれた、コエドによるまちづくりの新たな取り組み【日本サッカー・マイノリティリポート】

カテゴリ:Jリーグ

手嶋真彦

2023年07月15日

世田谷区でも仕組み作りをスタート

コエドスポーツの種目は、この基礎運動クラスなどバラエティに富む。いわゆるマルチスポーツも選択できる。(C)weclip

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 子どもたちの可能性を広げるのは、運動を含めたスポーツだけではない。横田たちは次の三つのカテゴリーそれぞれで、コエド(co-ed=協育)の仕組みを回していく構想を持っている。

「スポーツと学習と社会教育です」

 学習のカテゴリーは、コエドスポーツの勉強版だ。たとえばリタイアした教職経験者が、放課後などに子どもたちの面倒を見る。一人っ子だったり、親が共働きだったり、シングルだったり、事情を抱える子どもたちを孤独にさせず、スポーツの基礎運動能力に相当する国語算数理科社会などの学力を伸ばしていく。

 働く大人たちと触れ合う機会を設けるのが、社会教育だ。子どもたちが地域の職場を訪れ、どんな仕事に取り組んでいて、どんな働き甲斐を感じているかなど、見学したり、質問したりする。誇りを持って自分の仕事と向き合う大人たちとの出会いを通して、子どもたちの将来の夢が広がっていけばいい。

 スポーツと学習と社会教育のそれぞれで、地域の大人たちが協力し、協同で地域の子どもたちを育てていく。それが協育を意味するコエド(co-ed)の本質だ。

 協育の仕組みが回れば「子どもたちをハブにする」(横田)大人同士の接点も増えていく。大人同士の接点が増えれば、地域のネットワーク自体が広がり、密にもなっていくだろう。

 多様な価値観に触れ合う機会が増えれば、大人たちの学びに繋がる。横田たちはそうした成長のあり方を「共育」と表現する。「共育」が子どもたちの「協育」を豊かにし、「協育」が大人たちの「共育」を豊かにする。

「未来を担う子どもたちも、見守る大人たちも成長して、地域がさらに活性化していく。そんな世界観を実際にこの川越につくっていけたらと思います」
 
 そう語る横田には、家族と過ごせる憩いの場ができている。20歳の頃に創立メンバーとなった川高蹴球会だ。

「絶対楽しいから一緒に行こうと、最初は頑張って(妻を)連れ出しました」

 今年43歳の横田は大学在学中に学生結婚し、21歳で父親となる。大学卒業後は一般企業に就職し、仕事の都合で川高蹴球会を一時期離れもしたが、復帰後は妻とまだ幼かった長男を試合や練習に連れていくようになる。サッカーと“一家団欒”を両立させたいとの思いからだ。

 それから20年の月日が経とうとしているが、横田の家族は今でも試合や練習に普通に参加する。離れて暮らす長男は川越の実家に帰ってくれば、川高蹴球会の練習にまじってボールを蹴る。今年18歳の長女にはこう聞かれる。

「今週、何時から?」

 時間が合えば、長女も顔を出す。

 横田家の4人の子どもたちが幼い頃は、川高蹴球会の仲間たちが良き遊び相手になってくれた。

「自分の子どもたちが、いろんな人と出会えてコミュニケーションを取っているのは、やっぱり良いなと思いました」

 妻は妻で多少なりとも日常から離れて、リフレッシュできているようだった。他愛ない世間話などで楽しそうに過ごしている妻の横顔が、横田にも輝いて見えた。

 横田よりもはるかに社交的だという横田の妻は、そのコミュニティで盛り上げ役にもなり、家族ぐるみの付き合いでは横田の知らないところで子育てなどの悩み事の相談相手にもなっているらしい。

 そんな積み重ねを体感してきたからこそ、協育と共育は、横田にとっては机上の空論などではない。創立24年目の川高蹴球会で、サッカーを介して人と人とが繋がってきた温もりが、横田の心のなかに残っているからだ。

 川高蹴球会が過渡期を迎えた数年前、横田はチームから離れていく仲間たちを、悔しさを感じながら見送った。家庭との両立が叶えば、今でも一緒にワイワイやっていたかもしれない。

 いろんな人がいるのと同じで、どの家族も横田の家族と同じでないことはわかっているが、それゆえに横田はこう思う。どんな家族にも居場所がある、そんな環境を、川高蹴球会にも、川越という地域にもつくっていきたい、と。

「川越がモデルケースになって、だったら他のエリアでも試してみようと、そんな話になれば、すごく面白いと思います」

 実際に横田たちは、すでに東京都世田谷区でも、川越と同じようなコエドの仕組み作りを進めているという。

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