バロンドールが獲れる――。指揮官の言葉に発奮したイグアインが爆発。
その攻撃メカニズムの中でフィニッシュを担うのがゴンサロ・イグアイン。ここまで17試合でチーム総得点(31)の半数を上回る16ゴールというハイペースでゴールを量産しているのは、その爆発的なスピードとどこからでもワンタッチで枠を捉える傑出したシュート力という生来の武器を活かした単独プレーだけでなく、チームのメカニズムの中で機能する戦術的な動きを身につけ、より完成度の高いストライカーに脱皮したからだ。
サッリ監督は、イグアインに対してこう諭したという。
「お前は世界ナンバーワンのセンターフォワードになれる才能を持っている。なのに、オフ・ザ・ボールの動きが緩慢過ぎる。もっと積極的にスペースに飛び出したり、ゴール前に詰めたりする動きを増やせば、それだけでまだまだ点が獲れる。バロンドールだって夢じゃない。もし今後数年でバロンドールを獲れなければ、それは怠けていたせいで、100パーセントお前の責任だ」
今シーズンのイグアインは、シュート数も枠内シュート数もリーグでダントツの1位。前線でラストパスを待つだけでなくチームの攻撃メカニズムに絡んで自らチャンスを作り出しているからこその数字である。
ナポリは攻撃だけでなく守備に関しても際立った個性を持っている。常に間隔を狭く保った最終ラインが、まるでロープでつながれているかのように協調しながら整然と動く。その唯一の基準はボールであり、敵の選手が入ってきてもラインを崩して掴まえることはしない。自陣ペナルティエリアの中ですらマンマークをせず、完全なゾーンディフェンスを保って守っているのだ。
この連携の取れたみごとなラインコントロールの秘密は、日々のトレーニングにある。サッリ監督は練習場にドローンを2機常備して守備練習を上空から撮影し、リアルタイムでその映像を見ながらラインの動きを修正しているのだ。
明快かつ緻密な戦術から巧みな人心掌握、そして最新テクノロジーの積極活用まで、大手銀行のエリート社員から転身した異色の指揮官のマニアックな仕事ぶりが、ナポリの躍進を支えている。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
サッリ監督は、イグアインに対してこう諭したという。
「お前は世界ナンバーワンのセンターフォワードになれる才能を持っている。なのに、オフ・ザ・ボールの動きが緩慢過ぎる。もっと積極的にスペースに飛び出したり、ゴール前に詰めたりする動きを増やせば、それだけでまだまだ点が獲れる。バロンドールだって夢じゃない。もし今後数年でバロンドールを獲れなければ、それは怠けていたせいで、100パーセントお前の責任だ」
今シーズンのイグアインは、シュート数も枠内シュート数もリーグでダントツの1位。前線でラストパスを待つだけでなくチームの攻撃メカニズムに絡んで自らチャンスを作り出しているからこその数字である。
ナポリは攻撃だけでなく守備に関しても際立った個性を持っている。常に間隔を狭く保った最終ラインが、まるでロープでつながれているかのように協調しながら整然と動く。その唯一の基準はボールであり、敵の選手が入ってきてもラインを崩して掴まえることはしない。自陣ペナルティエリアの中ですらマンマークをせず、完全なゾーンディフェンスを保って守っているのだ。
この連携の取れたみごとなラインコントロールの秘密は、日々のトレーニングにある。サッリ監督は練習場にドローンを2機常備して守備練習を上空から撮影し、リアルタイムでその映像を見ながらラインの動きを修正しているのだ。
明快かつ緻密な戦術から巧みな人心掌握、そして最新テクノロジーの積極活用まで、大手銀行のエリート社員から転身した異色の指揮官のマニアックな仕事ぶりが、ナポリの躍進を支えている。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。