【セリエA現地コラム】25年ぶりのスクデットへ。ナポリを変貌させた異色の指揮官

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2015年12月25日

縦に早く攻める新たなスタイルを植え付けた。

組織的なサッカーでエンポリを残留させた手腕が買われてナポリに引き抜かれたサッリ。リーグ屈指の戦術家として評価はうなぎ上りだ。 (C)Getty Images

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 首位インテルから5ポイント以内にナポリ、フィオレンティーナ、ユベントス、ローマが固まるという近年になくスリリングな混戦模様となっている今シーズンのセリエA。その上位陣の中でとりわけスペクタクルでダイナミックな攻撃サッカーを見せているのが、就任1年目のマウリツィオ・サッリ監督率いるナポリだ。
 
 開幕5試合で1勝しかできなかった時には、56歳ながらエンポリでの1シーズンしかセリエAの経験がないこの遅咲きの指揮官に、ナポリのようなビッグクラブを率いるのは重荷に過ぎたかもしれない、という疑念がクラブの周辺、とりわけマスコミに湧き上がったものだ。
 
 しかし6節にユベントスを2-1で下すと、その勢いでミラン、フィオレンティーナも連破して一気に波に乗る。11月30日の14節では首位インテルを破って、マラドーナ時代の1990年以来25年ぶりという単独首位。続くボローニャ戦を取りこぼしてトップからは滑り落ちたものの、インテルにわずか1ポイント差の2位という上々の成績で近年最高のクリスマスを迎えることになった。
 
 サッリ監督の最大の功績は、ベニテス前監督の下で不本意なシーズンを送って自信と拠りどころを失っていたチームに、明確なコンセプトと約束ごとに基づく戦術を植え付け、新たなスタイルとアイデンティティーを確立したことだ。
 
 コンパクトな陣形を高い位置まで押し上げ、前線からの組織的なプレッシングによって中盤で相手のボールを絡めとると、そこからダイレクトパスを多用した速いリズムで素早く縦にボールを運び、左ウイングのロレンツォ・インシーニェとCFゴンサロ・イグアインがドリブル突破やコンビネーションから一気にフィニッシュに持ち込む。
 
 1試合平均のシュート数は約17本でリーグトップ、クロスが少なくスルーパスが多いというデータが示すように、サイドをえぐるよりも中央に切れ込んで2ライン(DFとMF)間で起点を作り、そこから積極的に裏のスペースを狙っていく攻撃が特徴だ。
 
 カウンターアタックの回数(1試合平均5回弱)もダントツのリーグ1位。これは中盤でのボール奪取から素早く縦に展開するメカニズムがチームに浸透している証拠だ。
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