【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十八「昇格争いの緊張感」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年12月10日

昇格戦という舞台は、ポーカーゲームのような心理的掛け合いの色を伴う。

心理面が色濃く反映されたプレーオフ決勝。果敢さを欠いた福岡だったが失点後に挽回し、J1昇格を決めた。写真:Getty Images

画像を見る

 J1昇格プレーオフでは、心理戦の様相がより色濃く映る。
 
 例年、「引き分けでもいい」3位のクラブよりも「勝つしかない」6位のクラブが優勢、という逆転現象が起こってきた理由は、その心理作用に大きな影響があった。
 
 アドバンテージを守ろうとする後ろ向きな気持ちが、相手につけ入る隙を与えてしまう。そしてひとたび勢いを与えてしまうと、押し返すのは難しいの。それがサッカーというスポーツの特性なのだ。
 
 今季は3位の福岡が勝ち抜け、昇格を果たした。しかしC大阪に失点を喫するまでの彼らは、「同点でも昇格」という心理面から果断さを欠いていた。失点後、息を吹き返したように攻めに出て、どうにか中村北斗の得点で追いついたが、過去の轍を踏むところだった。もっとも、C大阪が守りに入ったことで福岡は勢いづいたわけで、ここでも心の動きが反映されていた。
 
 もちろん、切羽詰まった状況でこそ地金が出るとも言える。しかし下部リーグという技術、戦術的に決してレベルが高くはないゲームでは、精神的要素が強くなるのは必然だろう。
 
 昇格戦という舞台は、ポーカーゲームのような心理的掛け合いの色を伴う。そこに当該チームのファンならずとも、人々は興奮を感じる。原始的で分かりやすい、博打的なドラマ要素が豊富なのだろう。舞台役者となる選手の受ける圧迫は尋常ではないが――。
 
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
 
【関連記事】
【J1昇格プレーオフ決勝】中村が起死回生の一発!! 福岡が劇的ドローで5シーズンぶりのJ1へ!
【福岡】5年ぶりのJ1昇格へ。躍進したチームを率いる井原正巳監督の現実的思考に迫る!
【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十七「監督への道のり」
【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十六「育成に潜む矛盾」
【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十五「日本の総力」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト いざアジア王者へ!
    5月10日発売
    悲願のACL初制覇へ
    横浜F・マリノス
    充実企画で
    強さの秘密を徹底解剖
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ガンナーズを一大特集!
    5月2日発売
    プレミア制覇なるか!?
    進化の最終フェーズへ
    アーセナル
    最強化計画
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ