アンチェロッティにはチェルシーの監督就任の噂もあるが、こちらもモウリーニョのR・マドリー復帰と同様、単なる噂の域を出るものではない。なによりモウリーニョの途中解任自体、現実性の低い話だ。
 
　というのも、チェルシーと交わした４年契約には、途中解任した場合にはそれ以降、契約満了までの給料を一括して支払うことで違約金とする条項が盛り込まれており、経済的な負担が小さくないからだ。
 
　それでもあえて途中解任するという事態になったときには、ロベルト・ディ・マッテオの復帰、あるいは同じく現在はフリーのマルチェロ・リッピの招聘というふたつのプランがある。
 
　チェルシーは、リッピの息子で代理人のダビデ・リッピとコンタクトを取り、可能性を探っている。もしモウリーニョを切るとすれば、今シーズンの残りはそれなりの重みを持った大物にチームを委ねる必要がある、というのが、チェルシー上層部の考えのようだ。
 
　ダビデはそれを受けてオーナーのロマン・アブラモビッチと近い関係にあるアンドリー・シェフチェンコ（チェルシーOB）などとも話をしている。ただし、シーズン途中でのモウリーニョ解任の可能性はいずれにしろ低いというのが私の見方だ。
 
　その代わり、モウリーニョが今シーズン限りで切られる可能性は高い。その場合の後任としてチェルシーが狙っているのは、今シーズンで切れるバイエルンとの契約を延長しない可能性が高まっている、グアルディオラだ。
 
　バイエルンはもちろん契約延長・残留を望んでいるが、グアルディオラのほうにその意思があるかどうかは疑問だ。すでにこの時期からバイエルンが他の監督（アンチェロッテ
ィ）にコンタクトを取りはじめているとしたら、退団の可能性はかなり高まっていると見るべきだろう。
 
　彼が以前からマンチェスター・シティと接触しているのは周知の事実だが、チェルシーもあわよくばそこに割り込もうと狙っている。チームが大きな刷新の時期を迎えているのは明らかで、その全権を委ねるという魅力的なプロジェクトを提示して翻意させようと目論んでいるのだ。
 
　しかし、シティはかつてバルセロナで共に黄金時代を築いたフェラン・ソリアーノCEOとチキ・ベギリスタインSDが、今夏のラヒーム・スターリング獲得に見られるようにグアルディオラ招聘に向けて着実にレールを敷きつつある。やはり最終的な行き先はチェルシーではなくシティになる公算が高い。