“ラーム後遺症”に悩まされるドイツ代表。右SBの定位置を掴むのは誰だ!?

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2015年11月13日

現時点で最もレギュラーに近いのがギンター。

先日のシャルケ戦で1得点・1アシストの活躍を見せたギンター。ドイツ代表でも右SBの定位置を掴めるか。(C)Getty Images

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 ボールを保持し、常に主導権を握ろうとするのが今のドイツ代表のスタイルだ。そのサッカーを実現するうえで、SBに課せられるタスクは多い。基本的な1対1の強さに加え、ビルドアップへの貢献、崩し/仕掛けの局面でのサポートなどが求められている。
 
 レーブ監督が、セバスティアン・ルディ(ホッフェンハイム)やエムレ・ジャン(リバプール)といった中盤センターを本職とする選手を右SBで使っているのは、そのためだろう。
 
 冷静な判断力と正確なキックが売りのルディは、一定の守備力も備える。ただ、スピードとポジショニングに難があり、とりわけ数的不利な状況での対応力に課題を残す。
 
 一方のジャンは、ボールを持ったときのアイデアが豊富で、1対1にも強い。しかし、オフ・ザ・ボールの動きに連続性がなく、攻守の切り替えのときに出遅れてしまうのが大きな欠点。試合中にたびたび集中力が切れてしまう悪癖も、改善する必要がある。
 
 このふたりを抑えて、現時点で最もレギュラーに近い位置にいるのがドルトムントのマティアス・ギンターだろう。
 
 前所属のフライブルク(12~14年に在籍)でCB、SB、セントラルMF、トップ下と様々なポジションを経験し、そのユーティリティー性を買われて14年7月にドルトムントに加入。だが1年目はビッグクラブ特有のプレッシャーに押しつぶされ、実力を発揮できなかった。
 
 今シーズンも開幕当初はCBの控えという位置づけだったものの、ウカシュ・ピシュチェクの負傷により右SBで起用されると、圧巻のパフォーマンスを披露。攻撃にも守備にも関与できるポジションで、本来のダイナミズムを取り戻した。
 
 傑出しているのは、ボールを呼び込む動きだ。タイミングの良い攻め上がりで香川真司やイルカイ・ギュンドアンからのパスを受け、ゴールにアシストと得点に絡む決定的な仕事を連発している。「敵の最終ラインを突破するのに大きな役割を果たしている」とスポーツディレクターのミヒャエル・ツォルクも賛辞を惜しまない。
 
 その活躍ぶりが認められ、ユーロ予選のアイルランド戦(10月8日)とグルシア戦(10月11日)では初めて右SBでプレー。だが崩しの局面にうまく絡めず、やや不本意な出来に終わった。
 
「アウトサイドでの突破力が欠けている」とレーブ監督からは課題を指摘されたものの、悲観する必要はない。右SBに本格コンバートされてから日が浅いうえ、ギンター自身も21歳と十分な伸びしろを残しているのだから。この若武者が、ラームの後継者たりえるポテンシャルを秘めているのは間違いない。
 
文:中野吉之伴
 
【著者プロフィール】
中野吉之伴/ドイツ・フライブルク在住の指導者。09年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの実地研修を経て、現在はFCアウゲンのU-19(U-19の国内リーグ3部)でヘッドコーチを務める。77年7月27日生まれ、秋田県出身。
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