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【セリエA現地コラム】「イタリア的リアリズム」に根差したスタイルで結果を残すインテル

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2015年11月05日

昨シーズンの得点王イカルディの低調な数字もいわば「想定内」だ。

長友はローマ戦で今シーズン二度目の先発出場。対峙するサラー(左)を封じ込めて、評価を上げた。(C)Getty Images

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 もちろん、守備に人数とエネルギーを割いていれば、攻撃が手薄になるのは避けられない。
 
 昨シーズンのセリエA得点王でエースのマウロ・イカルディが、ここまで3ゴールと波に乗り切れないのは、質の高いボールを供給できず、前線で孤立させてしまっているチーム全体の責任だ。
 
 自陣の深い位置でボールを奪った後のインテルは、前方にパスコースが少ないがゆえにビルドアップが遅い。
 
 そのうえ、ゲームを組み立てるレジスタ(司令塔)が不在なため、スムーズにボールを敵陣に運べないのだ。
 
 イカルディの最大の特長は、裏への飛び出しやクロスへの鋭い反応。その持ち味を発揮できるようなボールが前線に供給されるのは、1試合に数回あればいいほうだ。
 
 しかしそれも、マンチーニ監督にとっては「想定内」。チームが志向するのは、まずは失点しない安全第一の戦い方に徹し、90分間のうち何度か訪れるチャンスを活かして1点を奪い、それを守り切るイタリア的リアリズムに根差したスタイルだからだ。
 
そして、それを実現できるだけの守備力が、現チームには備わっている。リーグ最多得点を誇っていたローマ攻撃陣を封じ込めた11節の一戦が、その好例だ。
 
 そのローマ戦では、これまでバックアッパーだった長友佑都とダニーロ・ダンブロージオが両SBで先発起用され、好調のモハメド・サラーとジェルビーニョの両翼にほとんど仕事をさせなかったように、選手層も充実している。
 
 しかも、バックアッパー陣が与えられたチャンスをしっかりと活かす高いモチベーションも保っているのだ。長丁場のリーグ戦を勝ち抜くうえでこのファクターは非常に大きい。
 
 フィオレンティーナやナポリのように華麗なサッカーを見せるわけでもなければ、ローマのように爆発的な攻撃力を備えているわけでもない。
 
 しかし、現在のセリエAで最も崩れにくく、安定感のあるチームはインテルだ。
 
 そして、セリエAの歴史を振り返れば、頂点に立ってきたのは、得てして最も得点が多いチームよりも、最も失点が少ないチームなのである。
 
文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
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