それ以外にも彼が選ばれた秘密がある。それはネイマールとの関係だ。D・アウベスとネイマールはバルセロナやパリ・サンジェルマンでも共にプレーしていた。2人ともタトゥーを一杯入れ、奇抜な髪形が好きで、ナイトライフを楽しみ、何よりスペクタクルなサッカーを愛す。つまりは気の合う親友だ。
ネイマールはいつでも友人に近くにいてほしいタイプ、D・アウベスの存在はネイマールの落ち着いたプレーにつながるだろう。また何かあった時にネイマールを制御できるのも彼だけだ。かつてロマーリオのことを止められたのはドゥンガだったように……。
チッチ監督はチームの中には入れないことを知っている。選手の中に自分の代弁者を持つのは非常に重要だ。今回、代表に選ばれたことでD・アウベスはチッチに感謝している。何も言わずとも、喜んでその役目を引き受けてくれるだろう。
D・アウベスの招集がなぜネイマールにとってプラスなのか
いや彼だけではない。ネイマールも、D・アウベスを選んだことに感謝している。また若手のブレーメルやガブリエウ・マルチネッリやブルーノ・ギマランイスなどはブラジルではほとんど知名度がないにもかかわらず、代表に呼ばれた。彼等もまたチッチには一生ついていこうぐらいの気持ちでいるだろう。
そう考えるとチッチのこの選択はすばらしい。世間ではいろいろ言われているが、私は天才だと思った。
2002年の日韓W杯の時のような、監督を中心に一致団結した、家族のようなチームが出来上がるかもしれない。それはブラジルが6度目を世界制覇を狙ううえで、非常に重要なのだ。
文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。
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