同じビッグクラブでプレーする日本人が増えれば「それこそ強い時代が来る」(本田)。
2次予選の初戦で戦ったシンガポールのように、引いてスペースを埋めてくる相手には、サイドを広く使った「幅を取った」攻撃が有効だ。しかし、アグレッシブにプレスをかけてきたシリアに対しては、逆に「選手の距離感が離れてしまう」。そうした戦術的な齟齬が出てきた際には、選手たちだけで修正する判断力も求められると言うのだ。
ピッチ内の状況に応じてポジショニングを変えるのは、そう簡単なことではない。ひとりがチームオーダーから外れた動きをすれば、必ずどこかにしわ寄せがくる。仮に本田ひとりが中央へ寄ったとしても、周囲の連動がなければ孤立するだけで、攻撃は上手く回らないだろう。ともすれば、そのポジショニングが守備面での穴にもなりかねない。
本田が求める臨機応変な対応は11人の連動が不可欠で、高いレベルでの共通理解が求められる。クラブチームのように毎日顔を合わせる環境ならばすり合わせは可能だが、活動期間が限られる代表チームでは困難な作業だ。それでも本田は言う。
「本当は代表でもっと練習が積めたらいいですけど、まあそれはどの国も平等なんで、言っても仕方がない。とはいえ、国によっては、クラブに帰っても同じようなメンバーでやってるとこもあるじゃないですか? 日本代表は最近やっと、ふたりくらいが同じクラブという状況がマックスになったんですかね。でもそれが、3人、4人、5人となり、しかもビッグクラブになってくれば、それこそ強い時代が来ると思います。そこを目指していくべきですね」
同じビッグクラブで複数の代表選手が活動する国など、本当にごく一部の限られた強豪だけだ。少なくとも、日本が近年のうちに、彼らと肩を並べるとは想像できない。しかし、本田は真剣に、その高みを目指している。自分の発言が絵空事に終わったとしても、理想を高く置かなければ成長が鈍化するのを知っているからだ。
思えば、所属クラブであるACミランへの痛烈な批判も、根底にある考え方は同じだ。どこまでも貪欲な成長への意欲が、本田に核心を突かせる。
チームメイトやスタッフ、そして自分への高いハードルを設定し、それを乗り越えて次のステップに進む。潔さすら感じさせる覚悟を持った侍は、どこまでもそのスタンスを変えずに突き進んでいくことだろう。