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【W杯を手繰り寄せた男たち|茂庭照幸編】バカンス中に1本の電話が…。追加招集で初戦に途中出場、まさかの逆転負けに悔恨の念

カテゴリ:日本代表

元川悦子

2022年08月19日

後半開始早々に予期せぬアクシデント

「ビドゥカにもっと強く行くべき」。それを実行に移せず、試合にも敗れたことで「もっと主張できたらよかった」と悔やむ。(C)Getty Images

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 茂庭自身はすぐさま頭を切り替えた。FC東京でのプレーに集中していたから、クラブがオフに入れば当然、リラックスする。ハワイへ旅行に行くのも特別なことではなかった。

 そんな彼のところに1本の電話が入ったのが、オーストラリア戦を約10日後に控えたタイミング。田中誠が負傷し、5月31日に突如として追加招集が決まったからだ。

「電話が来た時は『マジか』というのが率直な感想でした。でも迷っている時間はないし、慌ててドイツに向かいました。大会直前にはマルタとテストマッチがあったけど、コンディションが整っていない自分は一切、参加できないまま本番を迎えることになりました。

 ただ、その時点では『まさか自分が出ることはないだろう』と第3GKのような感覚だった(苦笑)。僕は一番年下だったし、キャラクター的にもアッケらかんとしているので、とにかくチームの雰囲気を明るくすることだけを考えて日々、取り組んでいたんです」

 ジーコも当初は彼を使おうとは考えていなかったはずだ。が、加地亮の怪我の回復が遅れたことで、茂庭を取り巻く状況は微妙に変化しつつあった。

「初戦直前にジーコに呼ばれて『お前、行けるか?』と言われたのにはビックリしましたね。初戦は手堅くいきたいから、右ウイングバックにセンターバックの選手を使うというオプションを考えたんだと思います。『ウイングバックをやったことはありますし、やれと言われたらやります』とは答えましたけど、最終的にスタメンに選ばれたのは、コマ(駒野友一)でしたね」
 
 結局、ベンチから試合を見守ることになった茂庭。中村俊輔の先制点で、日本は1-0で折り返すことに成功する。けれども、35度超の猛暑のなか、15時にスタートした一戦だったため、選手たちの体力消耗は想像以上だった。そんな日本に予期せぬアクシデントが起きたのは、後半開始早々の56分。坪井の足がつってプレー続行が不可能になり、ついに茂庭にお呼びがかかったのだ。

「『もう足がつったの?』とホントに驚きました。それだけワールドカップの重圧と緊張感が凄まじいものなんだなと痛感しました。自分が行くことになった時は周りも『大丈夫か?』と思ったかもしれないけど、もうやるしかなかったですね。

 前半から試合を見ていて、相手のターゲットになっていたマーク・ビドゥカにもっと強く行くべきだと僕は思ったので、アタックを増やすつもりで入りましたけど、他の主力の考えは少し違っていた。前からつぶしに行くとチャレンジ&カバーが求められ、体力的にも厳しくなるので、みんなが前向きで守備できるような形を取るほうがいいという判断だった。あとから入った僕はそれに従うべきだと思いました」
 
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