【川崎】茫然自失のルヴァンカップ敗退。等々力での“悲劇”はなぜ起こったのか

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2022年08月11日

不安定さがチームの大きな課題

何度も周囲を叱咤激励した谷口。キャプテンとしてチームを引き締め直そうとした。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 指揮官は後半頭からチャナティップに代えて脇坂泰斗を投入し、前半はインサイドハーフの右に入った橘田を左へスライドさせ、脇坂を右に入れたことで、バランスは改善されたように映る。

 すると後半早々の53分、ここ数戦で光るワイドな展開で追加点を奪う。アンカーのJ・シミッチが自陣から敵陣左サイドのマルシーニョへ素晴らしいフィードを送ると、相手SBと入れ替わったマルシーニョがカットイン。中央のL・ダミアンとのワンツーで相手DFを翻弄したマルシーニョは、思い切ったミドルをネットに突き刺し、リードを2-0に広げたのだ。

 しかし直後の56分にCBジェジエウが足を痛めたのか、その場に座り込み、車屋紳太郎と交代する。その後も粘り強く対応していたが、どこかチームは安定感を欠いたように見えた。

 新型コロナウイルスの影響でメンバーを揃えられない試合が続き、しかも連戦のなかで絶対に負けらない横浜戦を戦ったのだから、コンディション調整は難しかったはずだ。

 カウンターチャンスでも息が合わず、守備でもクロスを上げられ、前半同様に谷口が声を荒げる。

 交代策を引っ張った鬼木監督は、80分にマルシーニョに代えて遠野大弥、家長昭博に代えて小林悠を投入。さらに85分にはL・ダミアンが務めていたCFにユーティリティの山村和也を入れ、明確な逃げ切り策を提示したように映ったが、ピッチでは落ち着かないプレーが続く。

 指揮官は「あの時間で何をするべきかは共有していたつもりですが、結果的に時間の使い方など、サッカーをずっと経験していれば分かるはずだと思うんですが、それがある意味、ゲームのなかで全員に意思統一できなかったのかもしれません。自分もそうですし、選手にも伝えましたが、ゲームの展開のなかでやっぱり感じなくてはいけないところだと思います。リスタートのところもそうですし、どこでボールを動かしたほうが良いのかなど。むしろ一番動かせる時間帯で動かせなかった。そこが自分のなかで後悔が残ります」と振り返る

 90分にはケアしていたはずの左からのクロスを加藤陸次樹にニアでダイビングヘッドで合わされ、1点を返される。まだリードを得ていたはずだが、チームは浮足立ったのか、マイボールにしてもフィニッシュまでつなげられない。嫌な空気が漂い始める。そして90+6分、右サイドからのクロスをゴールライン、ギリギリの位置から折り返されると、最後は山田寛人に押し込まれた。
 
 勝利への覚悟は“コロナ騒動”で揺れたここ数試合でより強いものにしたはずだった。それでもどこか気付かないうちに横浜戦の勝利や、2点のリードを得たことで緩みが生じてしまったのかもしれない。疲労が判断を鈍らせた可能性もある。最後まで諦めなかったC大阪を気持ちの勝負で上回れなかったのは悔しい結果だ。

 振り返れば、横浜戦の後に家長が指摘していた、今のチームに足りない“安定感”が、この試合の結果にもつながっているように感じる。家長はこう語っていた。

「慌てちゃったり、試合のなかで頑張るところを履き違えていたり、スムーズにチームが回る状況ができるようになっていけば、みんなが頑張らずにスムーズに戦える展開になるのかなと感じます。一人ひとりが向上すれば、90分余裕を持ってやっていけると思います」

 厳しい日程と状態のなかで全力を尽くして戦っていることは十分に理解できる。ただここ2年と比べれば、攻撃でミスが増えてリズムが上がらず、奪われ方が良くないだけに守備でも後手を踏む。そうした落ち着きのなさ、粗さの積み重ねがC大阪戦での後半アディショナルタイムにもつながったように感じるのだ。

 先の横浜戦では後半アディショナルタイムで劇的な勝ち越し点をあげたが、今回はその逆のパターン。試合によって波があると言わざるを得ないだろう。

 死力を尽くしたことで、不安視された横浜戦の“後遺症”が実際に表われてしまった形とも言えるのかもしれない。

 今は我慢強く進むしかない。残りの目標はリーグ一本。「この学びというか、同じようなことを繰り返すようでは自分たちは優勝を目指すチームではないと思うので、ここからもう一回切り替えてやっていきたい。大会は変わるので、一番は引きずらないことが重要だと思います」(鬼木監督)と、気を引き締め直して3日後のリーグの京都戦へ向かう。

 より覚悟を持って内容とともに勝負に徹することができるか。これまでも何度も苦境をくぐり抜け、進化してきたチームである。この悔しさを糧に意地を、そして新たな魅力を見せてくれるはず。さらなる巻き返しを今は信じたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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