"観戦力"識者のカンボジア戦展望――W杯アジア2次予選に潜む「ダブルスタンダード」

カテゴリ:日本代表

清水英斗

2015年09月03日

チームの目標の違いが、戦術の選択にも大きな影響を与える。

両者の思惑の違いを乗り越え、いかにゴールへの道を切り拓くか。日本代表には柔軟な戦い方が求められる。 写真:サッカーダイジェスト

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 それは同じグループのなかに、異なる思惑が存在することを示している。直近のワールドカップ予選ならば、各組2位以上が次のラウンドに進むだけ。3位になろうが、4位になろうが、その序列に大した意味はない。
 
 ところが、この”兼”が付いた予選は違う。「アジアカップに出場すること」を目指すシンガポールにとっては、2位が無理でも、着実に3位につけることが目標なのだ。
 
 日本でのアウェー戦といっても、過去の予選における対戦相手は、「あわよくば勝点3」という色気が、多少はあったはず。なぜなら、2位に入らなければ意味がないからだ。だが今回のシンガポールには、それが1ミリもなかった。強がりでもなんでもなく、アウェーで日本を相手に引き分ければ、3位に向けて大きく前進する。
 
 つまり、かつてないほど彼らは”引き分け上等”だったのだ。その目的を共有したことが、「90分間の徹底した守備」につながった。シンガポールのベンチが試合終了後に大きく沸いたのも、「目指した結果=引き分け」を手にしたからに他ならない。
 
 それはもちろん、今回のカンボジアにも言えること。引き分けは彼らにとって、文句の付けようがないほど、上々の結果だ。ただし、すでにカンボジアが2連敗でスタートしたことを考えると、シンガポールよりも「あわよくば勝点3」のギャンブルに出る色気は強いかもしれない。
 
 ワールドカップやアジアカップも含めて、サッカーのリーグ戦の文化には、「勝点3が目標とは限らない試合」がたくさんある。引き分けでもOK、あるいは得失点差の計算から、2点差以内の負けでもOK、といった試合も少なくない。そして、それは戦術の選択に大きな影響を与える。
 
 そのような状況に応じた目標を、試合が始まる前に、”両チームの視点から”考えてみることが大切だ。
 
 前回の試合を振り返れば、日本は勝点3がノルマであり、シンガポールは引き分けが目標だった。それを想定していれば、シンガポールが攻撃を捨てて守りを”徹底”し、後半になって日本が焦り始める試合展開は、ごく当たり前に想像できるケースだった。
 
 カンボジア戦でも、同じシミュレーションが必要になる。
 
 両チームが目指す結果。それは試合を観るうえでの大前提だ。観戦の前に、ぜひ想定しておきたい。
 
【PROFILE】
しみず・ひでと/1979年生まれ、岐阜県出身。プレーヤー目線で試合を切り取る気鋭のライター。観戦力にフォーカスした著書が好評で、近著に『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』(東邦出版)。

本文引用元
『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』(東邦出版)
著者:清水英斗
定価1400円+税

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