上出来とも言えるプロ初スタメンのゲームで、東は流通経済大柏戦の活躍につながる大きな学びを得ていた。この試合で東のマッチアップの相手となったのは、186センチ・89キロの体躯を誇るウェリントン。歴戦のストライカーとの駆け引き、激しい球際の攻防で、東は自分に足りないものを痛感したという。

「ウェリントン選手は競る前の駆け引きが物凄かった。ボールが来る前にすでにDFを背中で捉えて動けないようにしてくるし、クロスの入り方、スルーパスの受け方が上手いので、常にボールと相手の動きの両方をしっかりと捉えて、ステップを踏んだり、身体を入れていくことを意識しないと到底追いつきません。

　特に衝撃だったのはフィジカルコンタクトの面で、ウェリントン選手は腰が高いディフェンスで当ててもとビクともしない。低い位置で当たってもビクともしませんでしたが、そこできちんと身体を当てられる選手にならないとプロでは厳しいと思いました」

　元々、カバーリングのスピードやステップワークには自信があった。だが、そこに相手との駆け引き、意図した身体の操作を取り入れないと、J１の屈強かつ頭脳的なストライカーを押さえ込むことができない。そう悟った東はカバーリングの際の相手選手のランニングコースとボールのコースの予測、身体の向き、身体を当てるタイミングとポイントの模索を意識的に練習から取り入れた。

　結果、腰の位置が低いフィジカルコンタクトとボールを奪い切る力が格段に向上した。だからこそ、流通経済大柏戦ではノーファールで鮮やかなボール奪取を見せたりと、チームのピンチを何度も救うことができた。

「トップではパス一つひとつの質が全然違って、試合中のミスが本当に少ない。僕がその中でひとつのパスミスをすると、それがかなり目立ってしまうんです。トップのピッチに立っている人たちはサッカーに人生をかけている人たちなので、そこでミスをすると責任感が凄い。

　それに加えて、トップではちょっとしたミニゲームでも全力でやりますし、終了の笛が鳴った時にぶっ倒れるまでやり切る。それくらいの強度で練習からやっていかないと、自分の出したいプレーやチームとして出したいプレーが試合で出ないと思いました。そこを経験したからこそ、ユースでの試合中や練習中の雰囲気をもっと高めたいと思っています」
 

　3月に話を聞いた時はまだあどけなさが残っていたが、ルヴァンカップでプロのピッチに立った経験を経て、顔つきが精悍になっていた。スケールの大きなCBとしてより成長していくために、プロとユースの２足のわらじをきちんと責任を持って履き続ける決意を持って日々取り組んでいる。

　最後に、精悍な表情からあどけない高校３年生に戻った瞬間があった。それはスパイクについて触れた時だ。白地にオレンジと黒が入ったスパイク。

「オレンジ、黒なのでこれは（中学まで在籍をした）高川学園カラーです。お世話になった思いを込めて履かせてもらっています」

　義理堅い男が見せた屈託のない笑顔。これもまた東の持つ魅力のひとつだ。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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