特徴的なプレーとして浮き玉ボールの正確さがあげられる。今日のサッカーでは守備固めを攻略するために、相手DFライン裏へのふわっとしたチップボールが有効活用されているが、そうしたボールの使い分けが非常に優れているのがヴィルツなのだ。しかも普通にインサイドパスを出すのと同じ足の軌道からふわっとボールを蹴ってくるから、相手選手は反応しづらい。

　遠藤航と伊東洋輝がプレーするシュツットガルト戦（第22節）でも１ゴール・１アシストをマーク。得点機だけではなく全力で走りながら浮き球パスをいとも簡単にコントロールしたり、必死に守ろうとする相手をあざ笑うかのようにやわらかいボールタッチでチャンスを演出したりと随所に卓越したプレーを披露していた。

　ただ当の本人にとっては何か難しいプレーをしているという意識はないらしい。

「どの状況でもすぐ頭に浮かんだプレーをシンプルにしているだけだよ。それが他のみんなに簡単にプレーしているように見えるかどうかは、僕にはわからないよ」

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　ヴィルツの育成時代をよく知る元ケルン育成統括部長のクラウス・パプストは「あらゆるプレーを自然にすることができる選手だ」と話していたことがあったが、いつでもタイムラグなくスッとプレーをしているので、一つ一つのタイミングにも優れているのだろう。

　世間からの注目は高まり続けるばかり。市場価値はすでに7000万ユーロ（約88億円）にまで上っているという。バイエルン、レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシーといったビッグクラブが獲得に興味を示していると報じられたりするが、そうした喧騒にも踊らされないところも魅力だろう。ヴィルツはただシンプルにサッカーをしていたいのだ。

　レバークーゼンとの契約は現在26年まで。

「チャンピオンズ・リーグで優勝したい。そしてワールドカップで王者になりたい。僕の最大の目標だよ」

　そう語るだけにいつかクラブを去る日はくるのだろう。ただ自分の現在地を冷静に把握しながら、今、どこで、何をするのが自分にとって最適かを考えているだけに、オファーがあったからと慌てて移籍をしたりはしないはずだ。

　キャプテンのGKルーカス・フラデツキーからして「調子が悪い日でもワールドクラスだ」と脱帽するほどのクオリティを発揮しながら、ポテンシャルはまだまだ底が見えないヴィルツ。

　ドイツ至高のタレントは順調に成長をしている。

文●中野吉之伴

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