俊輔自身、どちらかといえば、足もとでボールを受けたがるタイプではある。なんでもない横パスやバックパスでリズムを整え、時間がかかっても敵陣の穴をうかがい、そこを突く。事実、スピーディなサッカーは「俺が苦手なやつね（笑）」と軽妙に話す。

　もっとも、たとえ苦手だとしても、「どうなっていくのか楽しみ」と期待に胸を膨らませている。そのなかで自分がいかに輝いてみせるかを試行錯誤している。

　ひとつの参考資料として、「コンサドーレのゴール集とか見まくっている」という。同時に、自分のプレー映像も見返しながら、両方をマッチングさせていく。

「自分のプレーだけは忘れちゃいけない。（チーム戦術に）持っていかれる時があるから」

　ただし、タメを作ったり、いなしたり、落ち着かせたりなど、得意とするプレーを強引にねじ込むつもりはない。「ハイテンポの中でも、自分の色とか、いろんな人を活かせることはある。奪ったボールを良い位置でもらえたら、すぐそこから裏に蹴って、走るとか」。あらゆるシチュエーションを想定し、自分にしかできないプレーを織り交ぜる作業を繰り返している。

「今もそうだし、シーズン中もそうだろうけど、探しているよ、自分の居場所を。自分がいることで、何ができるかって。こういうやり方なら、３人目、４人目で関われるな、とか。先読みしていれば、走りでも勝てるとか。考えながらやっている」
 

　新たなスタイルとの出会いを、ポジティブに受け止めている。「全部を受け入れるというか、どの監督でもそうしてきた」。もちろん、それだけでは終わらせない。「自分の色をどう出すか。それで評価を得て、試合に出る時間を長くする。どのチームでも、どの監督のもとでも、どの戦術でもやってきたことだし、それができるのが良い選手」だから。

　決して簡単ではないだろう。思うようにいかないかもしれない。キャリアの終盤にさしかかり、自分が選んだ道のりを振り返れば、「これで良かったのかな」と後ろ髪を引かれる時がないわけではない。

　様々な不安や葛藤はあるが、ネガティブな感情よりも、プロのフットボーラーとして挑戦できている現状に感謝し、生きがいを感じている。「それを噛みしめて、もう少し、走りたい」と、俊輔は静かに闘志を燃やしている。

取材・文●広島由寛（サッカーダイジェストWeb編集部）

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