葛藤する想いを抱えたまま半年ほど兼務し、10月に気持ちがまとまった。マネージャーとしてチームを支える――。覚悟を決めた高橋はプレーヤーから退き、新たな道に進む決断を下した。
 

　とはいえ、マネージャーの業務も簡単ではない。練習や試合はもちろん、ピッチ外での仕事は多岐に渡る。

「普段の練習は朝から用具の準備をし、練習後は片付けとユニホーム管理をしています。公式戦の時はハイエースに荷物を積む作業が主な仕事」

　誰よりも早くグラウンドに姿を見せ、トレーニングの準備を行なう。どうすれば、選手たちが気持ちよく練習を進められるのか。他のマネージャーと協力しながら、用具を揃え、選手たちが補給する水を準備する。練習後は片付けを行ない、自宅でも作業は続く。スケジュールの確認や、スタッフからの連絡事項を仲間たちに漏れなく共有。そして、夢であるホペイロの勉強も怠らない。仲間のスパイクを持ち帰り、松浦氏や緒方氏の動画を参考にしながら、一つひとつ丁寧に仕上げていく。

　試合になれば、用具を車に積み込み、会場に付けばアップの準備に移る。試合中もその仕事は途切れない。キックオフの瞬間を見届けると、すぐにベンチ裏へ移動してハーフタイムの準備に移る。ロッカールームを整理し、ミーティングがすぐにできるように椅子の配置を並び替え。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一人ひとりの椅子に飲み物を置いていく。選手たちの手を煩わせず、ハーフタイムのわずかな時間を効率よく使うための気遣いを心掛けてきた。

「雅史がいないとチームが成り立たない」

　豊島裕介監督も高橋の仕事ぶりに賛辞を送り、いつしか選手たちも全幅の信を寄せるようになった。

　それでも現状に満足せず、さらなる成長のために努力を惜しまない。３年生の夏休みにはインターンで２週間ほど栃木SCへ。トレーニングや練習試合ではチームマネージャーのサポート役として仕事を行ない、マネージャーとしてプロの基準を知る機会になった。