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マドリーはなぜチェルシーに凌駕されたのか? 優勢に見えた試合展開で生じた“誤算”【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2021年05月14日

精彩を欠いたS・ラモスは戦犯として非難を

敵地での第2レグでチェルシーに完敗を喫したマドリー。(C)Getty Images

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 欧州3連覇の名将ジネディーヌ・ジダンが率いたレアル・マドリーだが、今回は準決勝でチェルシーの前に膝を屈した。ファーストレグは1-1と五分に渡り合った。受け身に回りながらも、撓むような戦い方で、どうにか切り抜け、勝算はあったはずだが…。

 セカンドレグは、0-2と完敗に近かった。

 セルヒオ・ラモスは精彩を欠き、戦犯として非難を浴びた。エデン・アザールは最低の出来で、チェルシーの元チームメイトと笑い合っていたこともあって、糾弾されることになった。また、カゼミーロもこの試合は全く機能せず、中盤のラインを何度となく突破され、先制点のシーンもエンゴロ・カンテになす術なしだった。

 与えた決定機の数を見れば、劣勢は明白だろう。守護神ティボー・クルトワがビッグセーブで大量失点を凌いだに過ぎない。3-5-2のシステムもまるで機能していなかった。

「力の差を見せつけられた」

 負ければ賊軍がプロの世界であり、敗者に対する論調は必要以上に厳しい。

 しかしながら、マドリーも決定機を作っていた。相手GKのビッグセーブで二度、三度と防がれ、カリム・ベンゼマのヘディングシュートなど勝機がないわけではなかった。何より、ポゼッション率ではマドリーが上回っていた。

 ところが、優勢に見えた試合展開に誤算があったのだ。

【画像】辛辣批判!アザールがチェルシー選手と爆笑するシーン
 マドリーは、構造的に選手個人が戦術を運用している。試合の流れの中で有能な選手たちが感覚的に通じ合い、最善のチームプレーを作り出せる。それ故、戦術的な合理性を追求した強豪チームに強さを発揮できる。フィーリングで動けるだけに、より柔軟で融通が利く。それも、相手を見て弱点を突くようなことが得意で、ボールを持って攻めてきた相手に対し、強力な力を発揮できるのだ。

 一方で、能動的にボールを回し、相手を攻め立てる手立ては論理的に構築されていない。オートマチズムに欠ける。主導権を握って試合を動かすことがうまくないのだ。

 マドリーは、ラ・リーガでカディスのような昇格組に敗れ、スペイン国王杯で2部B(実質3部)のアルコジャーノに敗退している。翻って、クラシコではFCバルセロナを鮮やかに撃破し、CLではアトランタ、リバプールを力強く撃破した。そうなる理由は、そのプレー構造にある。

 チェルシーとのセカンドレグ、マドリーはボールを持たされ、攻め手を失った。オートマティックなパス回しは戦術的にトレーニングされていない。その結果、有能な選手が揃っていても、一瞬、人を探した。集団としての人のはがし方も練度は低く、結局、バックラインでのパス回しが多くなった。無理をしたところを食われ、一敗地にまみれた。

 得意とする戦い方を乗っ取られたようなものだ。

 ジダン・マドリードは、個人を基本にしたリアクションを最大限に高めて覇権を取ってきた。欧州3連覇は歴史に残る。その点、ジダンは名将で、選手たちは伝説だ。

 しかし、チェルシーに凌駕されたのも事実である。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。


【動画】カンテの攻め上がりからハベルツがループ!チェルシーの先制弾はこちら
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