2列目アタッカー陣は欧州組を中心とした既存戦力に目途
22日から千葉・幕張で本格的に再始動した東京五輪代表。5日間の短期間ということもあり、合宿初日から2部練で戦術確認を行うなど、森保一監督は急ピッチで選手見極めを進めている。2日目の23日午前練習では、少しぬるい空気が感じられた選手たちに向かって、横内昭展コーチが「(我々は)時間がないんだよ」と檄を飛ばす場面も見られ、緊迫感が一気に高まってきた印象だ。
同日午後練習でも4-2-3-1の布陣で攻撃面の確認を実施しており、最終日・26日の関東大学選抜とのゲームもこのシステムを採用すると見られる。東京五輪代表はこれまで3-4-2-1をベースにしてきたが、新戦力の多い今回は全員が慣れている前者で戦って、個々の長所を最大限発揮してもらった方がいいという判断なのだろう。初招集の金子拓郎(札幌)が「まずは特徴を出すところにフォーカスしてやっていきます」と語気を強めたように、持てる力を全て出し切ることが生き残りへの第一歩と言える。
こうした中、今回の中盤の陣容を見ると、ボランチを主戦場とする選手が非常に多い。1月のU-23アジア選手権(タイ)経験者の齊藤未月(湘南)、田中駿汰(札幌)を筆頭に、新戦力の金子大毅(湘南)、高嶺朋樹(札幌)、安部柊斗(FC東京)、郷家友太(神戸)、追加招集の渡辺皓太(横浜)と、実にMF枠9人中7人がボランチなのだ。
22・23日の練習では安部と郷家はトップ下に入っていたが、郷家の方は「今季後半からボランチで出させてもらえるようになって新しい自分を発見できた。この位置で出るならACLの時のようにチームを落ち着かせるプレーを出せたい」とボランチのポジション争いに参戦する意欲を示している。安部の方は「普段見ている景色とそんなに変わらない」と話したが、彼も本職の方がやりやすいはずだ。
今回呼ばれていない欧州組の中山雄太(ズウォレ)と2020年Jリーグベストイレブンの田中碧(川崎)もいるため、生き残れるのは1人か2人。それだけ狭き門なのは事実。にもかかわらず、今回の合宿でボランチ偏重の中盤選考をした理由を考えてみると、2列目アタッカー陣は欧州組を中心とした既存戦力に目途が立っているからだろう。
10・11月のA代表4試合に参戦した久保建英(ビジャレアル)、三好康児(アントワープ)、堂安律(ビーレフェルト)を筆頭に、1月のタイの大会に参戦した食野亮太郎(リオ・アヴェ)、今夏ドイツへ赴いた遠藤渓太(ウニオン・ベルリン)、技術と創造性では東京世代トップと評される安部裕葵(バルセロナ)など欧州組にはタレントがひしめいている。万能型の菅原由勢(AZ)も所属クラブでは右MFに入ることがあり、この人材を絞り込むだけでも大変なのだ。
さらに言えば、J1王者・川崎フロンターレの三笘薫と旗手怜央がいる。ゆえに、今季J1で主力として活躍した森島司(広島)や神谷優太(柏)も選考外になっている。相馬勇紀(名古屋)や金子拓郎(札幌)が呼ばれたのが異例と言ってもいいくらいの状況だ。「アタッカーは選びきれないほどいるから、手薄のボランチをなんとかしたい」というのが、今の指揮官の本音ではないか。