【岩本輝雄の英雄列伝|岡野雅行】プロで大成するには? “野人”が示したひとつの正解

カテゴリ:連載・コラム

岩本輝雄

2020年05月13日

中田との相性は良かったと思う

94年にプロデビューして、13年に引退。現役生活20年という長いキャリアを築けたのも、“スピード”という突出した武器があったから。写真:滝川敏之

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 岡野とは同級生で、小学校の時は横浜市選抜で一緒だった。神奈川県内の大会で優勝したりした一方、それぞれの所属クラブで対戦した時は、けっこう負けていたかな。岡野がいた駒林SCは強くてね。

 その後は、まったくと言っていいほど対戦経験はなし。高校では、僕は横浜商科大高だったけど、岡野は島根の松江日大高に進学して、卒業後は日大へ。その日大を中退して浦和に加入した94年シーズンに、ピッチ上で久々の“再会”を果たすことができた。

 ほぼ小学校の時のイメージしかないからね。まず思ったのは「髪の毛、伸びたなぁ」って(笑)。まさに“野人”という感じで、長い髪を振り乱して、自慢の俊足でぶっちぎっていた。

 岡野のスピードは、文字通り、最大のストロングポイント。FWの選手が裏に抜けようとする時、プルアウェイの動きを入れたりとか、いろいろ工夫すると思うんだけど、岡野の場合は、ある意味、そうした駆け引きがいらない。後ろからパスが出る。それを合図に、ヨーイドン。それで勝てちゃうんだから。これは脅威だよ。

 改めて、岡野というフットボーラーを考えると、やっぱりプロというのは絶対的な武器が必要だってことかな。“得意”とか“自信がある”というレベルでは厳しいかも。スピードにせよ、キックにせよ、シュートにせよ、ヘディングにせよ、誰にも負けないぐらいに“突出”していれば、厳しい競争を勝ち抜けるだろうし、現役も長く続けられると思う。
 
 だって、足もとの技術はお世辞にも……と、これは本人の名誉のためにも、あまり触れないでおこう(笑)。まあ、シュートがもう少し上手ければ、海外でも活躍できたんじゃないかとは思う。とにかく、岡野はスピードという突出した武器を最大限に活かして、ワールドカップにも出たんだから、凄いよ。

 さらに、パサーにも恵まれたと思う。代表では、中田英寿という“キラーパス”の使い手がいた。敵陣の空いたスペースにビシッと通す。狙ったところは完璧だとして、前線の選手が追いつけないほどの鋭いパスでも、岡野なら追いつける。ふたりの相性は良かったと思うよ。それこそ、中田のシュートを相手GKが弾いて、そのこぼれ球を岡野が押し込んでフランス行きを決めた“ジョホールバルの歓喜”は象徴的だよね。
 
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