イニエスタの退団が尾を引くバルサ――試合は味気なくなり、ロッカールームは無秩序に…【番記者コラム】

カテゴリ:連載・コラム

エル・パイス紙

2019年12月05日

分かりやすい武器はないが…

このイニエスタが去って以来、バルサは様々なファクターを失った。(C)Getty Images

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 バルセロナにはこれまで様々なタイプの名セントラルMFが割拠してきた。

 ジョゼップ・グアルディオラがDFラインの前でプレーする司令塔としての“4番“をデザインすると、同じくラ・マシア(下部組織の総称)からシャビが台頭。当初は同じ“4番”でプレーしたが、その後“8番”で新たな司令塔像を確立した。

 シャビとはタイプは全く異なるが、同じ右インテリオールのポジションで、同サイドのSBをフォローしながらリオネル・メッシを後方支援するという攻守のバランサーとしてチームを支えたのがイバン・ラキティッチだった。今シーズン、開幕当初からラキティッチの名前がスタメンから半ば消えていることとチームの攻守のバランスが崩れていることは決して偶然ではない。

 現在のチームにもそのラキティッチも含めてアルトゥール、フレンキー・デヨング、セルヒオ・ブスケッツ、セルジ・ロベルト、アルトゥーロ・ビダル、カルレス・アレニャと多士済々のタレントが揃っている。問題はエルネスト・バルベルデ監督がとっかえひっかえするので、誰がレギュラーでどの組み合わせが最適なのか未だに明確になっていないことだ。

 組織の熟成には相応の時間が必要な一方で、周囲は常に結果を求める。しかも、これだけ質・量ともに多様なメンバーを抱えているにも関わらず、今のバルサにはレガネス戦(ラ・リーガ第14節、2-1で勝利)のようにタフな試合展開を強いられたときに、攻守にチームを力強く牽引できる中盤の選手が見当たらない。そう、2シーズン前までアンドレス・イニエスタが担っていた役割だ。
 
 イニエスタはピッチを浮遊するようにプレーし、どこか捉えどころのない選手だった。彼にはカルレス・プジョールのようなガッツ、シャビのようなゲームメイク力、メッシのようなドリブルやシュートといった分かりやすい武器はない。

 ポジションもとりわけデビューしてから最初の数年間は、ウイングとインテリオールを兼用し、フランク・ライカールト監督時代にはアンカーを務めたこともあった。しかしそうした起用法に関係なく、イニエスタは必要な場面で試合に“色“をつけることができる選手だった。

 08-09シーズンのチャンピオンズ・リーグ準決勝チェルシー戦でのロスタイム弾のように、土壇場で劇的なゴールを決めれば、誰もがボールを欲しがらない局面でも、持ち前の独特の時間とスペースをコントロールする能力を駆使して積極的にパスを要求し、攻撃への道筋を作り続けた。

 そのチームにもたらす影響力と存在感はまさにバロンドール級であり、だからこそ同賞を1度も手にすることができなかったことが不思議でならない。この唯一無二のプレイヤーが日本のJリーグに渡ったことで、バルサは様々なファクターを失った。戦術面ではトリデンテの破壊力を重視するスタイルへと大きく傾き、試合は味気無さを増し、そしてロッカールーム内での無秩序を加速させた。
 

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