FW対CBの「消耗戦」を制したチームが勝機を見出す【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2019年10月14日

FWの投入で多くの試合をモノにしてきた指揮官は?

基準点を作ろうとするFWとそれを食い止めるCB。激しいデュエルが行なわれる。(C)Getty Images

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 サッカーにおいて、最前線では常に「消耗戦」が行われている。端的に言えば、フォワードとセンターバックの争い。心身ともに疲弊しながら、勝機を得られるか――。それは力比べの取っ組み合いであり、神経戦のような駆け引きの連続とも言える。

 攻める側は橋頭保を築くため、FWが身体を張る。前線基地でボールを収め、そこから攻撃を始める、という任務を担っている。自陣からボールを遠ざけ、相手陣営を押し下げることによって、防衛線を敷くことにもなり、攻守のアドバンテージを取ることができる。

 具体的には、ポストワークと言われるプレーだろうか。そのポストプレーが抜群にうまいのが、フランス代表カリム・ベンゼマ、ベルギー代表ロメル・ルカク、ブラジル代表ロベルト・フィルミーノといったFWたちだ。

 一方、守る側はCBが、攻撃拠点をつぶすことに全力を費やす。背を向けてボールを受け、空中にあるボールを競るFWを、容赦なく潰す。決して自由を与えない。自軍ゴールの近くに拠点を作られた場合、失点を意味するからだ。

 どちらが勝つか、形勢はめまぐるしく変わる。どちらも死ぬ物狂い。結局、身を削るような消耗戦となるのだ。
 
 脚を使い果たし、動きが鈍くなる。あるいは、ハイボールの競り合いでハイジャンプを重ね、跳べなくなる瞬間が来る。こうした肉体的な疲労だけではない。

 攻撃側はFWが動き直し、消える動きを入れ、裏を取る。こうした巧妙な戦術的な動きで、守備側のCBは“燃料”を失う。それを防ぐため、少々荒っぽいやり方でプレーを封じようとする。そのせめぎあいで一触即発。熾烈な局地戦が行われる。

 中盤の選手としてはFWが全線で消耗戦を戦ってくれることで、パスコースも生まれるし、ディフェンスのゆがみも見える。一方で、攻められる中盤の選手にとっては、バックラインの消耗を避けるため、一つ前の陣営として守備のフィルターとなる必要がある。

 チーム全体で、FWとCBの局地戦の勝敗が大きく勝負を左右するのだ。

 肉体的にも精神的にも消耗が激しいからこそ、交代のタイミングが大事になる。攻める側としては、どこで性質の違うFWを入れ、勝負に持ち込めるか。リバプールのユルゲン・クロップ、アーセナルのウナイ・エメリ、レアル・マドリーのジネディーヌ・ジダンという指揮官は、FWの投入によって、多くの試合をモノにしている。Jリーグでは、サガン鳥栖の金明輝も鋭い手を打つ監督だ。
 
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