【小宮良之の日本サッカー兵法書】言行が一致しない監督は、選手からそっぽを向かれる

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2019年06月08日

上に立つ者の振る舞いができているか

湘南を率いて8年目の曺貴裁監督。選手からの信頼も厚い。写真:滝川敏行

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「将が兵を戦場で存分に働かせるには、『かかれ、かかれ』と口先だけで命じているようではいけない」

 戦国時代、その武勇で知られた武将、蒲生氏郷はそう言葉を残している。奥羽に100万石の知行を受けた氏郷は、織田信長に激賞され、豊臣秀吉に怖れられた。天下を狙うほどの才覚があったと言われる。

「かかれ、と思うところには、将自らが率先して突っ込むべきだろう。その上で、『ここへ来い』と兵どもに命ずれば、それを躊躇う兵などいない。自分は後ろにいて、ただ兵に向かって、『かかれ、かかれ』と命じても、うまくはいかないものだ」

 氏郷は、猪武者だったわけではない。ここぞ、という瞬間を見極め、自ら前線に出た。その知勇を持ってして兵を鼓舞し、多くの勝利を得たのである。

 なによりも論ずるべきは、指揮官としての振る舞い、態度だろう。自らが何かを失い、犠牲を払ってでも、肝心の行動に出る。その姿にこそ、麾下の者たちは心服し、最大限の力を発揮することができるのだ。
 
 例えばJリーグのクラブでも、監督は思うように選手が働いてくれないとき、それを嘆くことがある。しかし、まずは自らの身の処し方を振り返るべきだろう。選手たちはそれを見極めているのだ。

 技量、力量にかかわらず、選手が一丸となって、集団のためにプレーできているチームというのは、指揮官が信頼を受けている。曺貴裁(湘南ベルマーレ)、長谷川健太(FC東京)は選手からの評判が良いが、それは成績にも反映されているだろう。

 言行が一致しない。そうしたリーダーは、残酷なまでに選手にそっぽを向かれる。その集団は、戦術よりもなによりも、力を出せない状態に陥ってしまうのだ。

 リーダーシップ、求心力。

 言葉にするとやや難しく聞こえるが、上に立つ者の振る舞いができているか――。スペインでは監督を敬称で「Mister」と呼ぶ(発音は母音になるため、ミステル)。それは、他の国も概ね似たようなものだが、監督であるだけで尊敬される一方、相応の姿勢も求められるのだ。
 
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