最も推したいのはフース・ヒディンク。
巷では早くもハビエル・アギーレという名前が次期代表監督の候補として、一部メディアで取り沙汰されているが、そもそも「日本代表」の監督とはどんな性質を持つ存在と言えるのだろうか。そして、その役職に適した人物には誰が挙げられるのか。『週刊サッカーダイジェスト』のコラムでお馴染みの加部究氏が、今後の代表監督選びに望まれるポイントを、具体的人物を挙げながら解説する。
【日本代表photo|大会総括記者会見】
【コロンビア戦 ゲームphotoギャラリー】
代表監督ができることは限られている。
例えば、日本代表をワールドカップで勝たせることだけをノルマにするなら、戦術に長け、的確に選手を見極める目を持った勝負師を招聘するのが、一番の近道だろう。
しかし日本の場合は、代表チームの人気があまりに突出し過ぎているという事情もあり、極端に影響力が大きい。もはやこの時代に、代表チームが戦術の発信源になることなどあり得ないのだが、日本ではまだその可能性を否定しきれない部分がある。
最も顕著だったのが、フィリップ・トルシエ時代で、日本代表がフラット3を導入すると、Jクラブから町の小学生チームまで右へ倣えで3-5-2に染まってしまった。トルシエの戦術的なコンセプトは抜きにしても、まずは形から入るあたりが、いかにも流行りものに飛びつきやすい日本らしかった。
さすがに当時に比べれば、日本の指導者たちもそこまで無垢ではなくなっているだろうが、やはりこうした日本の事情を考えると、代表監督を勝利至上で選ぶのは得策ではない。逆に流行に染まりやすい国民性を利用して、できれば将来にプラスになる改革を誘導できる人物が望ましい。
例えば、今、敢えてフース・ヒディンクを推したいのは、日本サッカー界もオランダ的な合理性に触れ、発想の転換を図ってほしいからだ。ヒディンクの懐刀は「ピリオダイゼーション」理論の生みの親、レイモンド・フェルヘイエンである。フェルヘイエンのインタビューは、『週刊サッカーダイジェスト』誌上において前後編で紹介したが、現在オランダ協会で指導者ライセンスを取得するには、彼の理論が必須になっている。
フェルヘイエンの得意分野はコンディショニングである。卓越した分析に基づき、故障なく効率的なトレーニングを進めており、これは日本サッカー界には最も欠落している考え方だ。敢えて言えば、日本の少年たちは、相当に大きな幸運に恵まれない限り、大人になるまで合理的な指導を受けることができていない。
小中高、さらには大学やプロになっても、旧態依然として長時間に及ぶ効果の薄い走り込みで、心身ともに選手の健やかな成長を阻害する指導者が存在する。日本代表の強化論からは少々外れているように思えるかもしれないが、そこにメスを入れない限り、いくらサッカー人口ばかりが増えても、潜在能力を引き出すことはできない。
ヒディンクの洞察力、分析、勝負勘などは、文句なしに一級品だ。アルベルト・ザッケローニ監督の戦術的な幅の狭さに歯がゆさを覚えたファンが、ヒディンクに同じフラストレーションを感じることはない。その点で両者は対極にある。だがそれ以上に、それだけの名将が先端のトレーニングや独自の発想を、代表監督という立場で発信し続けることが、大きな意味を持つ。
【日本代表photo|大会総括記者会見】
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代表監督ができることは限られている。
例えば、日本代表をワールドカップで勝たせることだけをノルマにするなら、戦術に長け、的確に選手を見極める目を持った勝負師を招聘するのが、一番の近道だろう。
しかし日本の場合は、代表チームの人気があまりに突出し過ぎているという事情もあり、極端に影響力が大きい。もはやこの時代に、代表チームが戦術の発信源になることなどあり得ないのだが、日本ではまだその可能性を否定しきれない部分がある。
最も顕著だったのが、フィリップ・トルシエ時代で、日本代表がフラット3を導入すると、Jクラブから町の小学生チームまで右へ倣えで3-5-2に染まってしまった。トルシエの戦術的なコンセプトは抜きにしても、まずは形から入るあたりが、いかにも流行りものに飛びつきやすい日本らしかった。
さすがに当時に比べれば、日本の指導者たちもそこまで無垢ではなくなっているだろうが、やはりこうした日本の事情を考えると、代表監督を勝利至上で選ぶのは得策ではない。逆に流行に染まりやすい国民性を利用して、できれば将来にプラスになる改革を誘導できる人物が望ましい。
例えば、今、敢えてフース・ヒディンクを推したいのは、日本サッカー界もオランダ的な合理性に触れ、発想の転換を図ってほしいからだ。ヒディンクの懐刀は「ピリオダイゼーション」理論の生みの親、レイモンド・フェルヘイエンである。フェルヘイエンのインタビューは、『週刊サッカーダイジェスト』誌上において前後編で紹介したが、現在オランダ協会で指導者ライセンスを取得するには、彼の理論が必須になっている。
フェルヘイエンの得意分野はコンディショニングである。卓越した分析に基づき、故障なく効率的なトレーニングを進めており、これは日本サッカー界には最も欠落している考え方だ。敢えて言えば、日本の少年たちは、相当に大きな幸運に恵まれない限り、大人になるまで合理的な指導を受けることができていない。
小中高、さらには大学やプロになっても、旧態依然として長時間に及ぶ効果の薄い走り込みで、心身ともに選手の健やかな成長を阻害する指導者が存在する。日本代表の強化論からは少々外れているように思えるかもしれないが、そこにメスを入れない限り、いくらサッカー人口ばかりが増えても、潜在能力を引き出すことはできない。
ヒディンクの洞察力、分析、勝負勘などは、文句なしに一級品だ。アルベルト・ザッケローニ監督の戦術的な幅の狭さに歯がゆさを覚えたファンが、ヒディンクに同じフラストレーションを感じることはない。その点で両者は対極にある。だがそれ以上に、それだけの名将が先端のトレーニングや独自の発想を、代表監督という立場で発信し続けることが、大きな意味を持つ。