【W杯 識者コラム】3試合で浮き彫りになった南米で勝つというハードルの高さと準備不足

カテゴリ:日本代表

加部 究

2014年06月25日

サプライズのふたりが先発起用されたことの意味。

これまで固定メンバーに固執してきた指揮官が一転、サプライズ選出された大久保、青山を大一番で先発起用。準備段階での失敗は明白だ。(C) SOCCER DIGEST

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 やはり南米開催の国際大会で結果を出すのは、日本にとって別格に高いハードルだった。
 
 レシフェ、ナタウ、さらにはクイアバと、日本が試合をした3か所はすべて酷暑に見舞われ、芝も剥げかかった部分が目についた。アルベルト・ザッケローニ監督は「理想からはほど遠いが、条件は同じ」と語ったが、これを利点にしたのは厳しい環境で育って来た南米、北中米、アフリカ勢だった。

【写真で振り返る】コロンビア戦
 
 結局この条件で、いつもの速いパスワークを実践するのは、世界王者のスペインでも難しかった。スペイン対オランダは、まさに象徴的な試合となったが、スペインの流麗なパスワークとプレッシングが滞り、オランダの最前線の個の力が際立った。日本もJユース出身選手が増え、人工芝育ちが大勢を占めるようになった。日本でプロになり、欧州へ飛び立って行った選手たちは、南米の荒れたピッチの難しさを経験していない。
 
 ピッチと天候に恵まれれば、オランダやベルギーを相手にしても「自分たちのサッカー」ができた。しかしハイテンポの組織的な攻守の連動が生命線の日本にとって、より個の能力が浮き彫りになる条件下では、コートジボワールやコロンビアには分が悪かった。
 
 要するにまだ日本は、全天候型の強さを獲得していない。その点では、震災でコパ・アメリカへの出場が見送られたことも少なからず影響したのかもしれない。この条件下では、世界で真剣勝負に臨むと、圧倒的な力不足を露呈することになった。
 
 すでにグループリーグ突破を決め、前2戦とは大幅にメンバーを変えてきたコロンビアだが、スタジアムを埋めた大勢のサポーターに応えようとしたのか、真剣に勝ちに出て来た。前半は早い帰陣で守備ブロックを整え、カウンターを狙う手堅い試合を心がけていたが、前半終了間際に岡崎慎司の同点ゴールが決まると、後半頭からはエースのハメス・ロドリゲスを送り込んできた。コロンビア代表のホセ・ペケルマン監督は「とにかく日本戦に集中し、次の相手のことは考えていなかった」という。
 
 もともと両国の力関係を考えても、日本が勝利至上の命題に向かうには無理があった。
「グループCにはビッグチームがないと言われたが、私はそれを聞いて笑った。コロンビアこそが、それだけの質を備えている」
 
 そう意識したザッケローニ監督だけに、難題を克服するにはギャンブルが要ると思ったのかもしれない。あれだけ固定メンバーに固執した指揮官が、代表発表でサプライズの対象となった大久保嘉人と青山敏弘をスタメンで起用してきた。大久保は、本大会に入るまで代表では未経験だった1トップを任されている。青山は、4年間不動だった遠藤保仁と、最近ではすっかりボランチの軸として貢献していた山口蛍を押しのけての抜擢となった。大久保は前線でボールを引き出し、盛んに攻撃に点火した。一方の青山は、順応するのに時間が足りなかった。
 
 大久保も青山もメンバーに入ったのだから使うのは悪くない。しかしここでサプライズのふたりが、スタメンでピッチに立っているのは、まさにザッケローニ監督の準備段階での失敗を意味した。いつまでもボランチが遠藤―長谷部誠のコンビだけでは、手詰まりになるのは明白だった。青山が機能するのかは、大会に入る前にしっかりとチェックしておくべきだった。大久保も「力は分かっている」(ザッケローニ監督)なら、なおさらもっと早く招き入れて、十分に呼吸を合わせておくべきだった。

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