【黄金世代】第4回・稲本潤一「若きサムライたちへ、名手からの伝言」(♯6)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年09月18日

ドイツの時は、その程度のモチベーションでしかなかった。

ロングインタビューも今回が最終回。セカンドキャリアなど近未来への展望を語るなかで、意外な一面も垣間見せた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 2000年2月、香港カールスバーグカップで日本代表デビューを飾り、以降、10年と4か月に渡ってコンスタントにキャップを刻んだ。
 
 黄金世代の中では、遠藤保仁(12年4か月)に次ぐ息の長さ。82試合(5得点)出場は歴代13位タイだが、サッカーファンの脳裏に残したインパクトは計り知れなく大きい。
 
 そんな稲本潤一が代表キャリアの集大成として臨んだのが、2010年の南アフリカ・ワールドカップである。ちょうどその年の春に川崎フロンターレに移籍し、9年ぶりでJリーグに復帰。岡田武史代表監督の厚い信頼を得て、23名の登録メンバーに滑り込んだ。
 
 本大会ではグループリーグ初戦のカメルーン戦と、同最終戦のデンマーク戦で途中出場し、名クローザーぶりを発揮。数多の修羅場を潜り抜けてきた経験をフルに活かし、ワールドカップ初登場の選手が多かったチームを陰ながら支えた。
 
 穏やかな表情で、アフリカでの日々を振り返る。
 
「個人的に良い時(2002年)と悪い時(2006年)の大会を経験してたから、初戦で勝とうが負けようが、いいモチベーションをキープするのが大事やと感じながらやってた。(楢﨑)正剛さんが第1キーパーじゃなくなったり、(中澤)佑二さんがキャプテンじゃなくなったりで大会前は目まぐるしかったけど、それを感じさせないチーム力、団結力があのチームにはあった。ベンチにいて楽しく感じられたのは、ワールドユースとあの南アだけかな」
 
 4年前、ドイツ・ワールドカップでの自身の姿がフラッシュバックする。
 
「年齢的なものもあるけど、南アでは試合に出れても出れなくても勝ちたいって気持ちがまずあって、それを実現させるために高いモチベーションで取り組んでた。ドイツの時は、正直そこまでやれてなかった気がする。多少は不平不満を言ってたと思うし、その程度のモチベーションでしかなかった。そういうのは伝染するもので、絶対にやっちゃいけないこと。(中村)俊輔さんも正剛さんも同じ考えでね。みんなが同じ方向を見てたからこそ、(ベスト)16に行けたんやないですかね」
 
 日本代表での話をひとしきり終えたところで、もう一度、ワールドユースでのシャビの話に立ち返った。稲本は「自分のタイミングで行ってボールを獲れなかったことはほとんどない」と前置きしたうえで、「それでもシャビには歯が立たなかった」と説明した。
 
 ほかにはいなかったのか? いた。やはり、いた。シャビをも凌駕する巨星が。
 
「もうね、忘れもしませんよ。2000年のサンドニ。そう、0-5のね。あん時の(ジネディーヌ)ジダンだけはホンマに強烈やった。ピッチは雨でびちゃびちゃなんやけど、フランス人にはまるで関係なかったみたい。なにをやっても軽くあしらわれて、間合いにさえ飛び込ませてもらえんかった。好き放題やられて、チームはずるずる失点を重ねて。ちょうど僕は海外のチームを探してる時でね。欧州の代理人がプレーを観に来てくれてたんですけど、あの内容やからねぇ……。総スカンでした」
 
 レ・ブルー(フランス代表の愛称)にこてんぱんに叩きのめされ、トルシエジャパンもファンも、日本サッカー界の誰もが衝撃を受けた「サンドニ・ショック」。わたしは試合後、パリ市内へ向かう電車の中で、フランス人のチビっ子に指で0対5と示された。あの屈辱と崩壊により一度リセットし、謙虚になれたからこそ、2002年の躍動があったといまでも信じている。
 
 稲本にとってもやはり、アンフォーゲッタブルな出来事だったのだ。

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