【甲府】キーワードは「回避」。プロビンチャが残留へ向けて選択した方法論とは?

カテゴリ:Jリーグ

大島和人

2017年08月28日

川崎の鬼木監督「奪われたところの回避に向こうもチャレンジしていた」

甲府は24節を終了して残留圏ギリギリの15位。16位とは勝点1差だ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

画像を見る

 8月27日の川崎フロンターレ戦は、結果こそ2-2の引き分けだったが、ヴァンフォーレ甲府にとって収穫のある戦いだった。

 川崎はJ1最強のポゼション力を持ち「アクション」で相手を上回ろうとするチームだ。対する甲府は23節を終えた時点でわずか12得点。前任の佐久間悟監督(現GM)が「我々はボールを持っている時がピンチ」とぼやいていたことさえある。基本的には耐えて少ないチャンスを仕留めるスタイルのチームだ。
 
 例えば今年4月16日の7節・アルビレックス新潟戦は早々に速攻から先制を許すと、そのままボールを「持たされる」展開で0-2の敗戦を喫した。昨季に比べて守備は大きく改善している。一方で攻撃面の課題解消はなかなか進んでこなかった。
 
 ただし徐々に、少しずつだが、そのような甲府の「長患い」が克服されつつある。27日の川崎戦は相手にPKで先制を許したもの、70分にリンス、74分にドゥドゥと畳みかけて一時は逆転。リーグ戦24試合目にして二度目の複数得点を挙げ、90分に追いつかれたものの初の逆転を記録した。
 
 試合後に川崎の鬼木達監督はこう述べている。
「奪われたところの回避に向こうもチャレンジしていた。そこで奪えないことで自分たちがリズムを崩した」
 
 川崎は前に人をかけて攻めてくるチーム。ボールを失った後も急いで帰陣するのでなく、押し込んだまま相手ボールを奪いに行く発想が強い。甲府にとってはすぐ奪い返されることが最悪で、広いスペースに大きく蹴ってしまう選択は安全。しかしこれをやり過ぎると自分たちの時間を作れず、試合運びが安定しない。
 
 甲府は川崎のハイプレスに対して、ショートパスによる「回避」を試みた。新井涼平はこう振り返る。
 
「持たれる時間が増えてしまうかなというのがあったけれど、そういう中でも意識的に自分たちでボールを持って行こうということで試合に入った。怖がらずに全員がボールを受けて、ポジションを取り直した結果がああなった。やればできると試合前から思っていましたし、それが上手く出た」
 
 チーム全体で、判断を伴ってボールを動かすというメカニズムの浸透には得てして時間がかかる。ただ甲府は4月にできていなかったことが、8月に入ってできるようになった。新井も「キャンプからずっと取り組んできて、ここ何試合かは自分たちが意識的に近い距離を取って、ボールを受けたがれるようになっている」と認める。キャンプからの積み上げが半年を経て、ようやく形になった。
 
【関連記事】
【札幌】6年半ぶりに復帰した残留請負人。その“残留力”の極意とは何か?
【J1採点&寸評】甲府2-2川崎|劇的同点弾の森本がMOM! 甲府は助っ人が躍動
【甲府】G大阪戦勝利の陰にあったいくつかの変更点。674分ぶりの得点、11試合ぶり白星の舞台裏
大迫勇也も驚いたハリルの“あの采配”。「日本人の監督にそうした発想はない」
【日本代表|ポジション別序列】本田と久保が熾烈な争い。期待値の高い柴崎、杉本の位置付けは?|MF&FW編

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ