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【今日の誕生日】3月26日/ワンプレーで奈落の底に落ちた男――ウォメ(元カメルーン代表)

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年03月26日

誰もが尻ごみする極限の状況のなかで勇敢さを示したものの…。

左サイドを主戦場に、SB、ハーフとしてプレーしたウォメ。写真はシドニー五輪決勝で金メダル決定のPKを決めた瞬間。 (C) Getty Images

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◇ピエール・ウォメ:1979年3月26日生まれ カメルーン・ドゥアラ出身
 
 2005年10月8日、ドイツ・ワールドカップのアフリカ予選。エジプトとの最終戦、本大会進出のためには勝利が必要なホームのカメルーンは、1-1でアディショナルタイムに突入し、ここでPKを獲得した。
 
 ドイツ行きを決める重要な役割を担ったのが、ピエール・ウォメ。勝利を確信した観客(選手も)によってスタジアムが騒然とするなか、彼の左足から放たれたボールはポストを叩く……。決勝点は入らず、間もなく試合終了とともにカメルーンの予選敗退が決まった。
 
 チームメイトの誰もが尻ごみするなか、ペナルティスポットに向かった勇敢なウォメだったが、失敗の代償は高くつき、予選敗退の戦犯にまでされ、自宅や自動車を破壊される事態にまで至ってしまった。
 
 さらにチームメイトからも非難を浴びるなど、散々な目に遭ったウォメ。2000年のシドニー・オリンピックでは、決勝戦(対スペイン)のPK戦で最終キッカーとして成功し、金メダル獲得を決めた経験を持つが、国の威信を懸けた戦いでの失敗がいかなる事態を引き起こすかを、身をもって知ることとなった。
 
 96年に生まれ故郷からイタリアに渡ったウォメは、この年に大躍進を遂げるヴィチェンツァでプロとしてのキャリアをスタートさせ、そこからルッケーゼ、ローマ、ボローニャ、フルアム、エスパニョール、ブレッシア、インテル、ブレーメン、ケルンと渡り歩いた。
 
 2010年にアフリカ・ガボンのサパンでプレーし、12年からは母国のクラブ、コトンスポール、キャノン・ヤウンデに所属。7年前には生命の危険にすら晒されたが、やはりカメルーンという国は彼にとって特別なものだったのである。
 
 37歳となったウォメは現在、フランスのロアというクラブで現役生活を送っている。
 
 さて、彼のようにひとつのプレーで大きな災難に遭ったり、そのキャリアに大きな影響をおよぼしてしまったケースは、長いサッカー界では幾つも存在する。
 
 古くは、50年W杯で開催国ブラジルのGKを務めたモアシール・バルボザが、引き分けでも優勝となるウルグアイとの一戦で相手の決勝ゴールを許したため、長く戦犯扱いを受け、不遇な人生を送ったといわれている。
 
 日本が「ドーハの悲劇」を味わった94年アメリカW杯の予選では、フランスも終了間際にブルガリアの逆転ゴールを許して本大会行きを逃したが、ボールキープすべきところでクロスを上げて、相手に最後の攻撃の機会を与えてしまったのが、FWのダビド・ジノーラだった。
 
 パリ・サンジェルマンでプレーしていた彼に対しては、監督のジェラール・ウリエまでが辛辣な言葉を浴びせたぐらいであり、その後も数シーズンを国内で過ごしたものの、ついにイングランドにプレーの場を移し、以降、フランスに戻ることはなかった。
 
 94年のトヨタカップでヴェレス相手に予想外の敗北を喫したミラン。失点はいずれも、DFアレッサンドロ・コスタクルタが与えたもの(彼のファウルによるPK&バックパスをカットされた)で、しかも退場処分まで受けた彼は、以降、長く続くスランプに陥ってしまった。
 
 他にも、EURO2000決勝戦でのアレッサンドロ・デル・ピエロ、ドイツW杯・クロアチア戦での柳沢敦のように、大舞台で決定機を外し、長く叩かれて辛い思いをした選手も多々いる。

 しかし最大の悲劇は、アメリカW杯本大会のアメリカ戦でオウンゴールを決めてしまい、グループリーグ敗退後に母国コロンビアで射殺されたアンドレス・エスコバルのケースだろう。
 
 ラフプレーということでは、82年スペインW杯準決勝で悪質なタックルで相手選手を負傷退場に追い込んだハラルト・シューマッハーは自国民からも大非難を浴び続け、98年フランスW杯のアルゼンチン戦で報復行為により退場になったデイビッド・ベッカムは、敗戦の主要因として激しいバッシングに遭った。
 
 気の毒、自業自得……ケースは様々だが、大舞台に立つような選ばれた選手の場合、誰からも崇められる英雄となるか、キャリアを脅かされるほどのA級戦犯となるかは、紙一重の差と言えるかもしれない。

戦犯として袋叩きに遭ったジノーラ。もっとも、この予選でフランスは最終節の前に予選突破を決めるチャンスがあったにもかかわらず、それを活かせなかった。一選手に責任を 問うのは酷な話だった。 (C) Getty Images

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EURO2000決勝、イタリアは後半終了間際にフランスに追いつかれ、延長戦で力尽きた。後半にダメ押しのチャンスだったシュートを外したことについて、デル・ピエロは「しばらくは自己嫌悪に陥り、敗戦の全ての責任が自分にあると思った」と振り返っている。 (C) Getty Images

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