ワールドカップ最大の悲劇から20年……甦るアンドレス・エスコバルの思い出

カテゴリ:国際大会

サッカーダイジェストWeb編集部

2014年07月02日

コロンビアのイメージを高めようと努めていたピッチ上の紳士。

知性的なプレーと抜群の空中戦の強さを併せ持った名DF。背番号2はコロンビア・サッカーにおいて、エスコバルの代名詞だった。 (C) Getty Images

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 1994年7月2日の深夜、コロンビア・メデジンで、バー「エル・インディオ」を出た長身の青年が、ふたりの男と遭遇。少しの口論の後、12発もの弾丸を浴びて死亡した。「オウンゴールをありがとう」という言葉とともに銃を乱射した男は、一発ごとにサッカーの得点時の実況を真似て叫んでいたという。
 
 27歳の若い命を散らしたのは、アンドレス・エスコバル・サルダリアガ。地元メデジンのナシオナル(現アトレティコ・ナシオナル)に所属し、1週間ほどまでは母国コロンビアの代表として、アメリカでワールドカップを戦っていた超一流のCBだった。
 
 1967年3月13日にメデジンの中流家庭に生まれたエスコバルは、20歳でプロサッカー選手となった。ナシオナルでは89年にリベルタドーレス・カップ優勝を果たし、同年12月にはトヨタカップ出場のために来日。ミランと延長戦にもつれ込む激闘を演じた(0-1で敗戦)。翌年にイタリアで行なわれたワールドカップで、コロンビア代表の一員として全4試合フル出場を果たし、ルイス・カルロス・ペレアとのCBコンビは、大会屈指と高く評価された。
 
「ピッチ上の紳士」とまで呼ばれ、インテリジェンスの高いプレーが目立ったエスコバルは、愛する母国が麻薬と犯罪でイメージされることに心を痛め、自身が名声を高めるにつれて、少しでもコロンビアのイメージを良くしようと独自に運動を行なっていた。
 
 94年アメリカ・ワールドカップ予選ではアルゼンチンを敵地で5-0の大差で下すなど、圧倒的な強さを見せたコロンビア。当時世界最高峰リーグだったイタリア・セリエAで猛威を振るっていたFWファウスティーノ・アスプリージャをはじめ、金髪の司令塔カルロス・バルデラマなど、各ポジションに世界的名手(もちろんエスコバルもそのひとりだ)を揃えたコロンビアは、本大会を迎える頃には一躍、優勝候補の一角にまで挙げられるまでになっていた。
 
 しかし注目を集める存在になれば、そこに犯罪の影が忍び寄るのは、とりわけコロンビアでは当然のことだった。サッカー界でも、この国では買収、脅迫が日常茶飯事で行なわれ、審判の射殺事件なども起こっている。もちろんこの時も、代表チームをめぐり、違法賭博の世界では莫大な金が動いていた……。
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