連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】李忠成の「見えないアシスト」と岐路に立つ遠藤航

カテゴリ:Jリーグ

熊崎敬

2016年03月21日

興梠と柏木の完璧なワンツーで生まれたゴールの「陰の立役者」。

先制点を奪った李が、興梠の追加点を「見えないアシスト」でお膳立て。浦和の勝利に大きく貢献した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 湘南がこれほど何もできずに敗れ去るのは珍しい。
 チケットが完売となったBMWスタジアムの一戦、印象に残ったのは浦和の強さばかりだった。
 
 浦和は計算されたパスワークで中盤を制圧した。
 最前線から落ちてくる興梠慎三に縦パスが入る。湘南の厳しいマークを背負いながらも彼は巧みにボールを落とし、今度は絶妙なタイミングで攻め上がる武藤雄樹が前へとボールを運ぶ。
 落ちてきた選手と攻め上がる選手が入れ替わる「スイッチ」が面白いように決まり、浦和は何度も湘南の背後を突いたのだ。
 
 このパスワークが完璧な形で結実したのが、55分に生まれた興梠の2点目だ。
 
 左サイドで武藤のパスを受けた興梠が中央へ切れ込み、右から顔を出した柏木陽介にパス。柏木は左足でシュートを撃つと見せかけて敵を中央に集め、身体を捻じるようにして右に流す。そこには完全にフリーになった興梠が待っていた。将棋でいうところの、詰みである。
 
 興梠と柏木のパーフェクトなワンツー。
 だが、このゴールには陰の立役者がいる。李忠成だ。彼は興梠から柏木への横パスを遮断しようと出てきた敵を、背中で抑えてしまった。このプレーがなければパスはカットされ、逆襲を受けていたかもしれない。ボールには触っていないが、見事なアシストといっていいだろう。
 
 Jリーグでは少ないが、背中で敵を抑えて味方を助けるプレーとは南米ではよく見られる。
 直接ボールに関与できなくても、敵をひとり動けなくさせてしまえば、それは立派なファインプレーだ。例えば3対3の場面でひとりがこれをやれば、状況は2対2に。2対2でやれば1対1に。ゴールへの障壁が少なくなるからだ。
 自分がボールに関われないなら、いっそ敵も道連れに。李が見せた姿勢は大いに学ぶところがある。
 
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