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「血の味がするほど戦う」デュッセルドルフの“赤きサムライ”田中碧の現在地と課題【現地発】

カテゴリ:海外日本人

中野吉之伴

2024年02月16日

「なぜ、タナカにパスを出さない⁉」

ブンデスリーガ2部で4得点を記録している田中碧。(C)Getty Images

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 ブンデスリーガ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフに所属するMF田中碧は、今シーズンの国内リーグ20試合に出場。4得点・2アシストをマークしている(21節終了現在)。現在7位とチーム状態はいまひとつだが、田中自身は専門誌『キッカー』から「及第点以上」の評価を受けるケースが少なくない。

 もっとも、順調なスタートを切ったわけではなかった。1~3節にフル出場を果たすも、4節のエルフェルスベルク戦ではベンチ外。その後の5~7節はベンチスタートとなり、8節のハンブルガーSV戦でスタメンに返り咲いた。しかし、9節オスナブリュック戦では再びベンチスタートを余儀なくされ、ピッチに送り込まれたのは1点リードの70分だった。

 そんな田中に対し、地元紙は容赦がなかった。

「タナカはフォルトゥナでプレーする気があるのか?」

「タナカは大きな問題になっている」

 ファンやメディアが“タナカ”にイメージ(期待)していることと、田中本人がイメージしていること(考え)がずれている。互いに頭では理解できても、どこかで微妙な違いを受け入れることができずにいたのかもしれない。

 当時、デュッセルドルフのダニエル・ティウネ監督はこう語っていた。

「彼にとっては簡単な状況ではないだろう。彼自身、まだ2部リーグを完全に理解するために何かが少し欠けているかもしれない、と話していたことがある」

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 そんな嫌な流れが変わった。スタメン出場した田中が10節のカイザースラウテルンで2ゴール、11節のブラウンシュバイク戦で1ゴールと躍動したのだ。この活躍を受け、地元紙は「タナカがついにフォルトゥナの一員になった」と手のひらを返し、ティウネ監督は「アオは血の味がするほど戦っていたよ。これからも“赤きサムライ”の姿を見せてほしい。我々全員が願っていることだ」と相好を崩した。

 チームメイトも賛辞を惜しまない。オランダ人DFのヨルディ・デ・ヴァイスは言う。

「僕も国外でプレーしたことがあるけど、うまくいかないときは本当につらいんだ。彼がそこから抜け出し、どれだけいい選手で、僕らにとって大事な選手かを示してくれてる。リスペクトに値することだよ」

 高く評価された理由は、得点を記録したからだけではない。全力で戦う。ミスをしても取り返そうとすぐに走り出す。苦しい時間帯にチームを助けるプレーを見せる。チームのミスが目立てば、ボールをしっかりとキープして味方が落ち着くための余裕を作り出す。そうした役割をこなしていたからこそ、田中は大きな信頼を勝ち取れたのだ。

 2部では1部以上にデュエルが重要視されやすい。そして、ファンは「クラブのためにファイトしてくれている」選手、プレーを求めている。

 そうした根っこの部分における評価も高まっているからだろう。1-1の引き分けに終わった21節のエルフェルスベルク戦では、とくに終盤「なぜ、タナカにパスを出さない⁉」というファンのリアクションが多かった。
 
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