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天皇杯決勝へ川崎の脇坂泰斗が辿り着いた新領域。苦しみ、もがき…それでもオニさん、ケンゴさんの言葉で気付けた“自分に合わせろ”の感覚【インタビュー/前編】

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2023年12月07日

3年連続となるJリーグベストイレブンも受賞

柔和な笑顔が似合う。それでも今のプレーはまさに“スーパー”だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 12月9日の柏との天皇杯決勝へ、川崎で今、見るべき選手と言えば、MF脇坂泰斗だろう。リーグ戦は苦しんだチームにおいて、脇坂自身も、もがき、悩み抜いてきたが、その先に見えた新たな領域があった。中盤で別格の存在感を放ち、3年連続のリーグベストイレブンに選ばれた男の今の想いに迫る。

――◆――◆――

 忘れられない3試合がある。

 世代交代を押し進めながらリーグの覇権奪回を目指した今季の川崎は、華々しく迎えた横浜との開幕戦を落とすと、4節の新潟戦で早くも2敗目を喫する。

 するとピッチの上からひとりの男の名前が消えた。5節のC大阪戦(△0-0)と7節のG大阪戦(●0-2)はベンチ外。6節の札幌戦(○4-3)は出番なし。チームを牽引するはずだった脇坂泰斗が経験した、苦しくもがき続けた1か月の日々だった。

「今振り返ると、3試合だけのことだったんですよ。でも当時は本当に長いなと感じていて。チームとしても思うような結果を残せずにいた。

 あの時はチームを勝たせるためにはどうしようと、あの手、この手を試した記憶があります。でも考えすぎちゃっていたんですよ。それで自分のプレーを見失う試合もあって」

 2023年シーズンの川崎にとって何よりの変化は3年間キャプテンを務め、長く大黒柱を担ってきた谷口彰悟の海外挑戦であった。ここ数年、川崎からは守田英正、三笘薫、田中碧、旗手怜央といった旬なタレントたちが次々にヨーロッパへ渡ったが、チームを引き締め、叱咤激励できるリーダーの穴は予想以上に大きかった。

 さらに新たなチャレンジとして鬼木達監督がキャプテンに指名したのは大卒3年目、当時24歳の橘田健人だ。

 副キャプテンとして橘田を支え、チームを上手く回すために自分がどうにかしなくてはいけない――。大卒6年目、昨年には伝統の14番を引き継いだ脇坂の胸にそんな思いが浮かぶのはごく自然なことであっただろう。

 しかし、新チームはなかなか軌道に乗らない。結果や内容が伴わない日々。脇坂が悩みもがいたことは、当時の姿からも想像ができた。彼の表情から笑顔が減っていた。

 脇坂をルーキー時代から指導する鬼木監督も何かを感じ取ったのだろう。それが3試合、ピッチから引き離す荒治療ともいえるものであった。

【PHOTO】天皇杯優勝へ!ベストイレブンにも選出された川崎の脇坂泰斗インタビュー秘蔵カットを一挙公開!
 それでも脇坂には背中を押してくれるふたりの恩人がいた。

 ひとりは背番号を引き継いだ憧れの先輩、中村憲剛である。

「『その時間は大事だから』と。『考えなくなったら選手は終わりだよ。だからきっとこれが成長につながるから』と話してくれて。

 さらに楽になれたひと言があったんです。僕、今年で28歳なんですが、『28でしょ? 28の時の俺のプレーなんか見返したらひどいぞ』と言ってくれたんですよ。

 正直、僕は『憲剛さん、そんなことはないでしょ』と思いながらも、なんだか力が抜けたと言いますか。憲剛さんはいつも心の底からの言葉を向けてくれる。考えることは大事ですよ。でも考えすぎなくても良いんだと同時に思えて」

 さらに鬼木監督からも温かい言葉をかけられていた。

「当時、結果が出ていなくてオニさんはチームのことに集中したい部分もあったと思うんです。でもオニさんは選手たちとしっかり向き合ってくれた。僕は『ヤストはヤストのプレーをしてくれ』と声をかけてもらえました」

 今のチームで自分はどうすべきなのか。ピッチから離れた時間を活用しながら頭の整理をしていく。シンプルに、シンプルに考えていくと、ひとつの結論に至った。

「自分のプレーをすることにフォーカスする」

 自分ひとりで勝てるなんて慢心はない。それでも答えは端的だった。

「自分が生きることが、回りを生かせること。チームを引っ張るということは自分のプレーをすること。そこが一番だなと」

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