ふたつの言葉の違いをかみ砕いて説明
その瞬間、練習の雰囲気が変わった。
4対2のパス回しを終えたあと、黒田剛監督が選手を集め、語気を強めて熱く指導した時である。
「そのパスは、チャレンジなのか、それともギャンブルなのか」
FC町田ゼルビアの広大なトレーニング場で話のすべては聞き取れなかったが、熱く語ったこのメッセージは筆者の耳に残った。選手に伝えた内容、そして言葉の真意はなんだったのか。翌日の囲み取材で黒田監督に訊いた。
「チャレンジには意図や根拠があります。チャレンジをみんなが推奨する、または『大いにチャレンジしようよ』と言えるのであれば、チャレンジに対してチームメイトみんながカバーできるし、サポートできるんです。
でもギャンブルは、勝手に自分の発想のなかで一か八かでやってしまうこと。それに対しては、誰もサポートできない。そして、それが失点に変わっていく瞬間があるんです。全然、パスを通さなくていいところを、一か八かでパスを通すことに何の意味があるのか。
パスを通す、またはリスクを負う根拠が、そこにあるかどうか。このパスが通れば1点なら分かるけど、パスが通らなかったら失点。そういうギャンブルをすべきなのか、という話をしました」
似ているようで異なる「チャレンジ」と「ギャンブル」。ウィットに富んだ指揮官は、ふたつの言葉の違いをかみ砕いて説明した。
「例えば、あるひとりのチャレンジャーがパチンコに行くとします。そのチャレンジャーにみんなが1000円ずつ渡して、『この1万円の軍資金で勝ってこい』と言ってチャレンジを与えたけど、負けたとします。でも、その場合は1万円をすっても、みんながその人のチャレンジを推奨して、お金を預けたわけだから、それぞれの1000円がなくなっても、みんな何も言わないでしょう。
だけど、その人が勝手にパチンコに行って、勝手に1万円をすってきて、みんなから1000円ずつ回収するとなれば『いやいや、ちょっと待てよ』という話になりますよね。これがチャレンジとギャンブルの違いです」
4対2のパス回しを終えたあと、黒田剛監督が選手を集め、語気を強めて熱く指導した時である。
「そのパスは、チャレンジなのか、それともギャンブルなのか」
FC町田ゼルビアの広大なトレーニング場で話のすべては聞き取れなかったが、熱く語ったこのメッセージは筆者の耳に残った。選手に伝えた内容、そして言葉の真意はなんだったのか。翌日の囲み取材で黒田監督に訊いた。
「チャレンジには意図や根拠があります。チャレンジをみんなが推奨する、または『大いにチャレンジしようよ』と言えるのであれば、チャレンジに対してチームメイトみんながカバーできるし、サポートできるんです。
でもギャンブルは、勝手に自分の発想のなかで一か八かでやってしまうこと。それに対しては、誰もサポートできない。そして、それが失点に変わっていく瞬間があるんです。全然、パスを通さなくていいところを、一か八かでパスを通すことに何の意味があるのか。
パスを通す、またはリスクを負う根拠が、そこにあるかどうか。このパスが通れば1点なら分かるけど、パスが通らなかったら失点。そういうギャンブルをすべきなのか、という話をしました」
似ているようで異なる「チャレンジ」と「ギャンブル」。ウィットに富んだ指揮官は、ふたつの言葉の違いをかみ砕いて説明した。
「例えば、あるひとりのチャレンジャーがパチンコに行くとします。そのチャレンジャーにみんなが1000円ずつ渡して、『この1万円の軍資金で勝ってこい』と言ってチャレンジを与えたけど、負けたとします。でも、その場合は1万円をすっても、みんながその人のチャレンジを推奨して、お金を預けたわけだから、それぞれの1000円がなくなっても、みんな何も言わないでしょう。
だけど、その人が勝手にパチンコに行って、勝手に1万円をすってきて、みんなから1000円ずつ回収するとなれば『いやいや、ちょっと待てよ』という話になりますよね。これがチャレンジとギャンブルの違いです」
例え話を挙げた黒田監督はサッカーの話題に戻し、選手に伝えたメッセージの真意を語った。
「練習の時はボールを失っても、誰かがまたボールをくれます。だからといって自分勝手なプレーをすると、チームメイトみんなで共有していることが矛盾してくる。そういう悪い習慣は、直らなくなります。
実際の試合で、ペナルティエリアのバイタルエリア付近で不用意なボールロストをしたり、勝手なギャンブルでカウンターを食らったら、攻めていた7~9人は、みんな50メートル以上、自陣のゴール前に戻って守備をする。
そして、やっとスライディングしてボールを奪って、また敵陣ペナルティエリアのバイタルエリア付近に入るためには、約100~120メートルを走る必要があります。ということは、チームとしては1200メートルくらいの体力を消耗する。たったひとりのわがままなプレーが、それだけチームに迷惑をかけるんだと、選手に教えました。
ボールを取られるのは、単純なことではない。試合だったら、そのあとは攻められている。基本的なことだけど、トレーニングのなかでは、なかなかリアリティを持ってイメージできないんです。ただ、そこにこだわるのがプロ選手だと思うし、サッカーを職業にする選手は、誰よりもそこに優れていると思うからこそ、もう一度、気づかせる意味で話をしました」
【PHOTO】ラストプレーの劇的決勝弾を後押ししたFC町田ゼルビアサポーター
「練習の時はボールを失っても、誰かがまたボールをくれます。だからといって自分勝手なプレーをすると、チームメイトみんなで共有していることが矛盾してくる。そういう悪い習慣は、直らなくなります。
実際の試合で、ペナルティエリアのバイタルエリア付近で不用意なボールロストをしたり、勝手なギャンブルでカウンターを食らったら、攻めていた7~9人は、みんな50メートル以上、自陣のゴール前に戻って守備をする。
そして、やっとスライディングしてボールを奪って、また敵陣ペナルティエリアのバイタルエリア付近に入るためには、約100~120メートルを走る必要があります。ということは、チームとしては1200メートルくらいの体力を消耗する。たったひとりのわがままなプレーが、それだけチームに迷惑をかけるんだと、選手に教えました。
ボールを取られるのは、単純なことではない。試合だったら、そのあとは攻められている。基本的なことだけど、トレーニングのなかでは、なかなかリアリティを持ってイメージできないんです。ただ、そこにこだわるのがプロ選手だと思うし、サッカーを職業にする選手は、誰よりもそこに優れていると思うからこそ、もう一度、気づかせる意味で話をしました」
【PHOTO】ラストプレーの劇的決勝弾を後押ししたFC町田ゼルビアサポーター