【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のバルサを振り返る Vol.3~1990-91シーズン ~

カテゴリ:メガクラブ

サッカーダイジェストWeb編集部

2015年11月17日

アクシデントを乗り越えて「ドリームチーム」の歴史が幕開け。

宿敵レアル・マドリーを王座から引きずり降ろし、新たなリーガの盟主に。91年1月の直接対決では快勝を収めた。 (C) SOCCER DIGEST

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中盤でやや疲れを見せはしたものの、シーズンを通して強さを見せ、追走するアトレティコ・マドリーを振り払ったバルサ。優れた国内外のタレントが魅惑のサッカーを披露した。ちなみにこのシーズン、あのジョゼップ・グアルディオラが19歳でリーガデビューを果たしている。 (C) SOCCER DIGEST

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 2シーズン前にヨハン・クライフが監督としてバルサに帰還し、就任1年目にして欧州タイトル(カップウィナーズ・カップ)を獲得したことは、バルセロニスタに大いなる未来への希望をもたらしたが、そこからの歩みは決して順調とは言えなかった。
 
 ロナルド・クーマンをPSVから、ミカエル・ラウドルップをユベントスから獲得して臨んだ翌シーズンは、リーガ制覇を期待されながらも、宿敵レアル・マドリーの5連覇を阻止できず、早くもクラブの理事会ではクライフの辞任を求める声も上がった。
 
 レジェンドが崖っぷちの状態で迎えた3シーズン目。しかし、このシーズンはバルサの歴史においても重要な1年となり、それはクライフにとっても、良い意味でも悪い意味でも忘れられないものとなった。
 
 このシーズン、バルサのアタッキングには抜群の破壊力が備わっていた。その原動力は、新加入のフリスト・ストイチコフ。ブルガリアのCSKAソフィアから加入したストライカーとバルサの邂逅は、2シーズン前、カップウィナーズ・カップの準決勝だった。
 
 クライフはこの時からストイチコフの獲得を望み、本人、そしてクラブ間での合意も得られたのだが、ブルガリア政府が設けていた年齢制限のため、1年間待たなければならなかった。
 
 加入したストイチコフはさっそくその本領を発揮したが、同時に彼の持つ気性の荒さもすぐに顔を出す。1990年12月のR・マドリーとのスーパーカップで、判定への不満から主審の足を踏みつけるという暴挙に出て、長期間、ピッチから締め出される羽目となった。
 
 一時は半年以上のサスペンションも検討され、これに対してバルサが「カタルーニャへの差別」と訴えるなど、サッカーの枠を超えての騒ぎにも発展したが、結局出場停止期間は2か月となり、これを終えた後もストイチコフは何事もなかったかのようにゴールを積み重ね、最終的にはチームのトップスコアラーにもなった。
 
 彼ひとりの力でなく、チームとして成熟してきたバルサは、開幕から好スタートを切り、後半への折り返し地点に達した頃には、すでに宿敵マドリーに2ケタの勝点差をつけようとしていた(当時の勝利勝点は2)。
 
 クーマンがアキレス腱を断裂するなどDF陣の主力が相次いで負傷するというトラブルに見舞われながらも最後まで息切れすることなく勝利を重ね、4試合を残して6シーズンぶり、11回目のスペイン王者に輝いたのだった。
 
 再び英雄となったクライフ。しかし彼にとってこの栄光のシーズンは、人生の災厄に見舞われた時期でもあった。
 
 マンチェスター・ユナイテッドに敗れ、2度目(自身3度目)のカップウィナーズ・カップ制覇を逃したことではない。その3か月前の91年2月、心筋梗塞で生死の境をさまよったのである。これにより、バルサは数か月間、クライフなしに戦うことを余儀なくされた。
 
 しかし、クライフの創り上げた“魅せて勝つ”チームは、副官カルロス・レシャックを臨時の指揮官に添えても何ら力を落とすことなく、圧倒的な力でリーガを制し、宿敵マドリーの黄金時代を終わらせた。
 
 90-91シーズンとは、いわゆる「ドリームチーム」の快進撃が始まった、バルサにとっての歴史的な1年だったのである。
 
 ちなみにこのシーズンの開幕前、バルサは「JALカップ」出場のために初来日を果たし、広島と東京で日本リーグ選抜と対戦している(1勝1分け)。

監督:ヨハン・クライフ(オランダ)
その他の主なプレーヤー:GKブスケッツ、DFクーマン、セルナ、ソレール、J・アルベルト、MFウルバノ、グアルディオラ、FWサリーナス、ピニージャ、マケーダ

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クライフ監督とDFクーマンのオランダ人2人のオフショット。ともに穏やかな表情だが、前者は心筋梗塞、後者はアキレス腱断裂と、大変な目に遭ったシーズンだった。 (C) Getty Images

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◎1990-91シーズン成績
リーガ:優勝(25勝7分け6敗・74得点33失点)
国王杯:準決勝敗退(対アトレティコ・マドリー)
カップウィナーズ・カップ:決勝敗退(対マンチェスター・ユナイテッド)
 
チーム内得点ランキング(リーガ):ストイチコフ(14点)、バケーロ(13点)、サリーナス(11点)、ラウドルップ(8点)、クーマン(6点)、ベギリスタイン(6点)、アモール(4点)、ゴイコエチェア(3点)、アレサンコ(2点)、エウセビオ(2点)、ピニージャ(1点)、ソレール(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN

GKブスケッツ(←ユースから昇格)
DFフェレール(←テネリフェ)
DFナンド(←セビージャ)
FWストイチコフ(←CSKAソフィア)
FWゴイコエチェア(←レアル・ソシエダ)
FWマケーダ(←ユースから昇格)
◇OUT

GKウンスエ(→セビージャ)
DFアロイージオ(→ポルト)
MFロベルト(→バレンシア)
MFミジャ(→レアル・マドリー)
FWバルベルデ(→アスレティック・ビルバオ)
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