殺気立った連中がそこかしこに…
ちょっと前の話になるけど、久しぶりにサポーターの熱狂を肌で感じたのが、ウェストハムとフランクフルトの試合だった。2021-22シーズンのヨーロッパリーグ(EL)準決勝の第1レグの取材に出掛けたロンドン・スタジアムでの話だ。
フランクフルトのサポーターといえば熱狂的な筋金入りで、ロンドンにも大挙して押し寄せてきていた。そんな彼らの様子を間近で見てみようと好奇心がむくむくと湧き上がってきたのは、ウェストハムのサポーターとの因縁があったからだ。この両者、セビージャの街で騒ぎを起こしていたんだ。
ELのラウンド・オブ16だった。フランクフルトはベティスと、ウェストハムはセビージャと対戦し、ともに第1レグがアウェーゲームという日程のいたずらで、サポーター同士がセビージャの街でかち合ってしまったってわけ。同日開催は無理だから、フランクフルトの試合は水曜日に前倒しされたんだけど、ベティスに勝ったその夜だ。血の気の多いフランクフルトのサポーターが瓶や棒切れ、椅子など手に手に武器を携え、アイリッシュパブで飲んでいたウェストハムのサポーターに襲い掛かった。
ウェストハム側もボトルやグラスで応戦したそのストリートファイトは、フランクフルト側に逮捕者が出るほどの騒動に発展してしまった。
この両チームが揃って勝ち上がり、準決勝で直接対決が実現したのは運命の導きか。フランクフルトのサポーターの息づかいを感じてみようと思い立ち、取材なんていう大上段には構えず、試合当日、スタジアム周辺をぶらぶらしてみたんだ。
殺気立った連中がそこかしこにいて、遠巻きに睨んでいるウェストハムのサポーターに対して悪意のこもった言葉をわめき散らしている。そんな荒々しいサポーターの一団の中に、ふと気がつくと飲み込まれてしまっていた。
【動画】人!人!人!まるでCG、アウェーサポーターでびっしり埋まったロンドン・スタジアム周辺
フランクフルトのサポーターといえば熱狂的な筋金入りで、ロンドンにも大挙して押し寄せてきていた。そんな彼らの様子を間近で見てみようと好奇心がむくむくと湧き上がってきたのは、ウェストハムのサポーターとの因縁があったからだ。この両者、セビージャの街で騒ぎを起こしていたんだ。
ELのラウンド・オブ16だった。フランクフルトはベティスと、ウェストハムはセビージャと対戦し、ともに第1レグがアウェーゲームという日程のいたずらで、サポーター同士がセビージャの街でかち合ってしまったってわけ。同日開催は無理だから、フランクフルトの試合は水曜日に前倒しされたんだけど、ベティスに勝ったその夜だ。血の気の多いフランクフルトのサポーターが瓶や棒切れ、椅子など手に手に武器を携え、アイリッシュパブで飲んでいたウェストハムのサポーターに襲い掛かった。
ウェストハム側もボトルやグラスで応戦したそのストリートファイトは、フランクフルト側に逮捕者が出るほどの騒動に発展してしまった。
この両チームが揃って勝ち上がり、準決勝で直接対決が実現したのは運命の導きか。フランクフルトのサポーターの息づかいを感じてみようと思い立ち、取材なんていう大上段には構えず、試合当日、スタジアム周辺をぶらぶらしてみたんだ。
殺気立った連中がそこかしこにいて、遠巻きに睨んでいるウェストハムのサポーターに対して悪意のこもった言葉をわめき散らしている。そんな荒々しいサポーターの一団の中に、ふと気がつくと飲み込まれてしまっていた。
【動画】人!人!人!まるでCG、アウェーサポーターでびっしり埋まったロンドン・スタジアム周辺
正直、肝を冷やしたね。まあ、滅多なことはないだろうけど、自分がイギリス人で、それも記者だと知れたら、何をされるか分かったものじゃない。ジャーナリストという職業はとかく敵視されがちだ。
見咎められないようにラップトップを入れた大きめのバッグを隠すように小脇に抱え、文字通り息を潜めていたよ。警官隊が周りを囲み、スタジアムまでノロノロと進むその道のりは、普段なら10分のところが1時間あまり。それこそ生きた心地がしなかったね。
この時、万が一に備えて考えていた自衛策が、長谷部誠と鎌田大地の名前を連呼すること(笑)。それでもダメなら、『ワールドサッカーダイジェスト』を鞄から取り出し、日本との繋がりをアピールしながら難を逃れようと思っていたよ。
フランクフルトのサポーターもなかなかのものだなと呆れたのは、取り囲んでエスコートする警官の注意の目を盗んで、お手製のステッカーを警察車両にペタペタと貼っていったこと。まったく、大胆不敵な連中だったね。
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2022年6月2日号より加筆・修正
見咎められないようにラップトップを入れた大きめのバッグを隠すように小脇に抱え、文字通り息を潜めていたよ。警官隊が周りを囲み、スタジアムまでノロノロと進むその道のりは、普段なら10分のところが1時間あまり。それこそ生きた心地がしなかったね。
この時、万が一に備えて考えていた自衛策が、長谷部誠と鎌田大地の名前を連呼すること(笑)。それでもダメなら、『ワールドサッカーダイジェスト』を鞄から取り出し、日本との繋がりをアピールしながら難を逃れようと思っていたよ。
フランクフルトのサポーターもなかなかのものだなと呆れたのは、取り囲んでエスコートする警官の注意の目を盗んで、お手製のステッカーを警察車両にペタペタと貼っていったこと。まったく、大胆不敵な連中だったね。
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2022年6月2日号より加筆・修正