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戦争、貧困、国外逃亡…マジョルカの“救世主”ムリチの知られざる壮絶なキャリアに迫る。「50人が一室でぎゅうぎゅう詰めで…」

カテゴリ:ワールド

エル・パイス紙

2022年02月26日

「1日1リットルの牛乳と玉ねぎをみんなで分け合わった」

加入後3試合で2ゴール・1アシスト。ムリチは決定力不足だったマジョルカの救世主的な存在となっている。(C)Getty Images

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 マジョルカの新ストライカー、27歳のコソボ代表FWヴェダト・ムリチは、戦乱のコソボからプロのサッカー選手になるまでの苦難の道のりを絞り出すように振り返る。

 彼が戦火に見舞われたのは5歳の時。1990年代後半、多くの住民と同じように、ムリチの家族もセルビアとの激しい紛争の恐怖から逃れるために、アルバニアへの集団疎開を余儀なくされた。帰国することができたのは、コソボが独立国家として承認され、命の危険がないことが確認された2か月半後のことだった。

「戦後、コソボにはほとんど何もなかった。特にスポーツはね。誰もサッカーをしようなんて気持ちになれなかった。叔父に『プロサッカー選手になりたい』と言ったら、『それは難しいな』と笑って返された。それから幸運にも状況が好転し始め、道が開かれた。必死に練習したよ。そうした運と家族の協力がなければ、そして神様がいなければ、実現できなかった」
 
 シャープな顎とひげで強調されているこけた頬に苦労の跡が刻まれている。

「戦争は世界と人類にとって最大の悲劇だ。唯一ポジティブと言えるのは、精神的にも肉体的にも強くなれることだ。僕の家族は50人ほどいて、一軒家の一室にぎゅうぎゅうに押し詰めになりながらの生活だった。ドイツからの援助物資が届くようになると、毎日、1日1リットルの牛乳と玉ねぎをみんなで分け合わった。生活は苦しかった。両親の大変さは手に取るように分かった。僕たち子供が食べ物や飲み物を欲しがっても、何も与えてもらえなかった。幸いなことに僕の家族は誰も戦争で死んでいない」

 セルビア兵による略奪は、ムリチに深い傷を残した。「彼らは僕たちの家に来て、爆弾を仕掛けると言った。母が僕たちの服を急いでバッグに入れ、車でアルバニアに向かったのを覚えている。街には、兵士が捨てた衣服がたくさん落ちていた」

 そんな中では、頭の中で憧れのサッカー選手を育んでいくという子供らしい夢や空想を掻き立てる行為とも無縁だった。「当時のコソボはそんなことを考える状況ではなかった。試合を見ながら、頭の中でいろいろな選手の特徴を組み合わせて憧れの選手像というものを思い描いたことはあった。でも1人だけに絞ることはできない」
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