【コラム】中村憲剛のドキュメンタリー映画の意味。込められたJリーグの未来へのヒント

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2022年02月22日

「自分の応援するクラブや選手について思いを馳せるきっかけになってくれたら嬉しく思います」

ドキュメンタリー映画「ONE FOUR KENGO THE MOVIE ~憲剛とフロンターレ 偶然を必然に変えた、18年の物語~」。絶賛公開中だ。

画像を見る

 川崎フロンターレ一筋18年。川崎にプロスポーツクラブを根付かせるのは難しい言われた黎明期から、今やJ1の絶対王者となった川崎と歩んできた中村憲剛の選手人生を描いたドキュメンタリー映画「ONE FOUR KENGO THE MOVIE ~憲剛とフロンターレ 偶然を必然に変えた、18年の物語~」が全国展開されている。

 当初は地元のふたつの映画館で上映されていたが、2週間で約1万8000人の来場者を記録したとのことで、2月11日から全国のイオンシネマ主要劇場で展開されることになった。

 筆者も改めて観させていただいたが、やはり観覧後は心が熱くなり、今年30周年を迎えたJリーグの未来へ想いを馳せたくなる。

 サッカーダイジェストで連載中のコラム「蹴球賢語」で中村憲剛は足を運んでくれた方々への感謝の想いとともに、こう語っていた。

「この映画はタイトルに僕の名前が入っておりますが、ともに作り上げた、みんなとの映画だと思っています。Jリーグの理念である百年構想、地域密着という部分、そしてかつてはJ1に上がりながら1年でJ2に落ちた川崎がなぜ今の成績を残せるようになったのか、その理由、源が詰まっている映画だと感じます。だからこそ、改めてひとりでも多くの方に見ていただき、自分の応援するクラブや選手について思いを馳せるきっかけになってくれたら嬉しく思います」

 
 かつて川崎は「地域貢献活動ばかりやっているから勝てないんだ」と言われてきた。

 ピッチでのパフォーマンスは当たり前として、町の人々と手を取り合い、楽しみながらともに歩む姿は、周囲から見ればどこか“甘さ”があるように捉えられたのかもしれない。

 それでも「川崎にあるプロスポーツクラブが川崎の町を、人々を笑顔にできなくてどうするんだ」。信念を持ちどんな場所にでも馳せ参じたクラブ、選手たちの歩みは、勝っても負けても“フロンターレを応援したい”という人々への強い想いへとつながり、2017年のJ1初優勝へと昇華された。

 以降は誰もが知る通り、毎年タイトルを獲得し続け、5年で4度のリーグチャンピオンに輝く黄金期へと続いている。

 もしかしたら他クラブのサポーターの方は複雑な想いを抱えるかもしれない。ただ、この成功体験に学べることはきっとあるはずだ。Jリーグの開幕から30年を迎え、日本サッカーの取り巻く環境は大きく変わっている。

 コロナ禍でスタジアムに足を運べる機会は限られる一方、世の中にはエンターテインメントが溢れている。気候にも大きく左右されるサッカー観戦を敬遠する人もきっといるだろう。

 でもこの30年で日本にも日本なりのサッカー文化が根付いたと信じたい。その文化をさらに発展させるために、この映画から学べることはきっとあるのではないだろうか。

 中村憲剛は今年初めのサッカーダイジェストでの村井満チェアマンとの対談でこうも語っていた。

「当たり前ですがプロとしてピッチでのプレーを突き詰める必要も間違いなくあります。同時にピッチ外の部分も意識しながら行動し、サッカー選手としてだけでなく、一社会人としても幅を広げてほしいです。そういった面で今も頑張っている選手やクラブはいるはずですが、もっと自分たちから発信して、より地域になくてはならない存在になるべきではないでしょうか。サッカーをやるだけでなく、他の部分にもサッカー選手としての価値を見い出せば、幅も広がるはずです。

 当然今はコロナ禍ですので、簡単ではありません。ただここ数年個人的に考えているのは『選手がサッカーだけをやる時代は終わったのではないか』ということです。改めて最重要なのはピッチ上のパフォーマンスです。でもそれと同じくらいピッチ外の活動にも価値があると僕は知ってもらいたい。影響力や拡散力を含め、選手には様々な力があります。それを示すことで選手として成長でき、得られるものがたくさんあると分かってほしい。選手やクラブが手を上げ動けば、地域の方、みなさんと大きなうねりを生み出せます。各地域がそれぞれの形で大きなうねりを作れば、日本中がサッカーで元気になり、Jリーグに関わるすべての方たちも豊かに発展するのではないでしょうか」

 予定される上映期間は2月24日(木)まで。まだご覧になられていない方は、一度、試しに映画館に足を運んでみてはいかがだろうか。

映画情報

文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
 
【関連記事】
「プスカシュ賞も夢ではない」岡山T・アウベスの“衝撃60Mロング弾”を海外メディア絶賛!伝説のゴールと比較する声も「シャビ・アロンソのようだ」
「レッドはあまりに気の毒」物議を醸したパトリックの一発退場。英国人記者はどう見た?「イングランドでは恥ずべき行為と…」
早くも松木玖生が台頭、新高3もトップデビュー! Jリーグ開幕戦、十代プレーヤーの活躍度は?
「まるで別世界にいるよう」神戸FWボージャンが母国紙に語った日本の印象。とくに感銘を受けたのは?「お気に入りになった」
「なぜ獲得した選手がすぐ活躍できるかって?」ポステコグルーが明かした“補強の秘訣”「日本人の場合は…」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ガンナーズを一大特集!
    5月2日発売
    プレミア制覇なるか!?
    進化の最終フェーズへ
    アーセナル
    最強化計画
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ