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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の九十五「日本サッカー界の監督からも『思想家』『革命家』は出現するか」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年11月01日

“狂気のビエルサ”は多くの敵と有能な“弟子”を生み出した。

革新的なスタイルを世界に発信する監督が日本から出現するか。今後の大きな楽しみでもある。写真は川崎の風間監督。 (C) SOCCER DIGEST

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 アスレティック・ビルバオ時代(2011~2013年)のマルセロ・ビエルサ監督を取材した経験がある。
 
 フットボールのために身体を借りている、という印象を受けた。偏りも、歪みも、精度の高さも、全て彼であり、どこを切り取っても、ビエルサというフットボールでしかなく、フラクタル(自己相似)だった。
 
 フットボールに対する並外れた情熱は「狂」を帯び、その狂から思想を発していた。思想とは、己の正義を論理化したものだろう。学び続けているが、それは思想を確立するためであって、誰かと折り合うことは一切ない。
 
 理想とするフットボールを体現するために、全てを抽象化、もしくは部品化し、自らをも精密な機械と捉えられるところがあった。周りから見れば、その追求心は狂気に近い。
 
 結果的に、“狂気のビエルサ”はチーム関係者とうまくいかず、ビルバオを去ることになった。
 
「オフのあいだにトレーニング施設のリフォームを完了すると約束した。それを果たせていない! なぜだ」
 
 ビエルサは腹を立て、業者を罵った。才気煥発な指揮官は、契約不履行が許せなかったのだろう。これを宥めようとしたクラブスタッフとも悶着を起こした。
 
 結局、これがわだかまりを残し、溝を生んでしまう。チーム内の士気は、著しく下がってしまった。味方がいなくなってしまったのである。戦略的に見て、明らかなしくじりだった。
 
 高い理想に向かって行動するビエルサは、他者にも完全無欠さを求める。相手の状況は一切顧慮しない。必然的に、たびたび軋轢を生んできた。ビルバオを退任後、マルセイユ、ラツィオなどでも似たような「約束を破った」という高潔すぎる姿勢で臨み、その任を降りている。
 
 思想家的リーダーが、しくじる時の典型的例だろう。
 
 しかしその一方で、この思想家的な指導者は、多くの「弟子」を育てている。
 
 ディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリー)、エドゥアルド・ベリッソ(セルタ)、ホルヘ・サンパオリ(セビージャ)はいずれも、ビエルサの影響を色濃く受けている。
 
 そして、理想に走りがちだったマネジメントに、実務的な感覚を採り入れた。3人のフットボールは、より実戦的なものとなっている。それは集団のマネジメントも同じで、柔軟性を忘れていない。思想家から実務家へ、という流れか。
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