インテルは苦しいながらもそれなりにバランスの取れた妥協策を。

カリアリ戦でPKを外して頭を抱えるイカルディ。10月18日にインテルとの契約を2021年まで延長したばかりだが、サポーターとの関係が修復されなければ冬か夏の退団も。(C)Getty Images
インテル公式サイトに掲載されたイカルディの謝罪声明は以下の通り。
「この2日間、私はインテルとのストーリーにおける悲しい一時を過ごすことになりました。しかし家族の中でも――私は常にインテルは何よりもまずひとつの家族だと教えられてきました――、困難な時期や誤解が起こることはあります。すべての始まりは、おそらくあまりに反射的な書き方をしてしまった私の本の1ページでした。いくつかの表現や言葉尻は明らかに不適切であり、インテルのサポーターがその対象になってしまったことを心から残念に思っています」
「それが多くの人々を傷つけてしまった。しかし、私たちは常に前を見て進まなければ、そしてできる限り、すべての物事が正しい場所に収まるよう努力しなければなりません。それゆえ、私はここで謝罪し、誰もこれ以上傷ついたり、裏切られたり、脅されたりしないよう、これらのページを抹消するための行動を取ります。今日私はクラブと話し合い、この不本意な一時に区切りをつけて、全員一丸となってひとつの目標、すなわちインテルの利益のために力を合わせることを誓いました。なぜならインテルよりも大きなものは何もないからです」
「そのために、私はクラブのすべての決定を受け入れました。今後は、チームにおける私の立場が要求する事柄に、もっとずっと大きな注意を払います。今、これまでにないほど結束した私たちは、次の戦いに向けて最大の決意を持って取り組んでいきます」
非常に回りくどい言い方になっているが、簡単に整理すると、ポイントは冒頭で触れた通り以下の3点になる。
・キャプテンマークは剥奪しない(ウルトラスの要求には応じない)。
・クラブは内規に従ってイカルディに処分(おそらく罰金)を下す。
・イカルディは自伝の内容に非があったことを認めて謝罪し、自伝を自費で回収。問題部分を削除した改訂版を発行する。
インテル・ウルトラスで最も影響力のあるボスの1人で、対外的なスポークスマンでもあるフランコ・カラビータは、この公式見解が出るよりも前に、ラジオ局のインタビューに対して次のようにコメントしていた。
「イカルディとの関係を修復することは不可能だと思う。我々を殺すと脅した人物だ。そんな輩と対話が成立するとは思えない。もしクラブがキャプテンマークを剥奪すると決めたのなら歓迎する。しかし我々は何の圧力もかけてはいないし、かけるつもりもまったくない。誰を脅迫したこともない」
また、ウルトラスの別の関係者はガゼッタ・デッロ・スポルト紙に対して、「イカルディとの関係を修復するつもりはないが、もし自伝を回収すれば彼に対する抗議行動はストップする」とコメントしている。
インテルとイカルディは実質的にこの要求を受け入れることで、ウルトラスの抗議がエスカレートする事態を回避する一方、キャプテンマーク剥奪という要求ははねつけることでマスコミからの批判もかわすという、苦しいながらもそれなりにバランスの取れた妥協策を見出したということになる。
当面は、ウルトラスとマスコミがこれに対してどんな反応をするのかが注目される。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。
「この2日間、私はインテルとのストーリーにおける悲しい一時を過ごすことになりました。しかし家族の中でも――私は常にインテルは何よりもまずひとつの家族だと教えられてきました――、困難な時期や誤解が起こることはあります。すべての始まりは、おそらくあまりに反射的な書き方をしてしまった私の本の1ページでした。いくつかの表現や言葉尻は明らかに不適切であり、インテルのサポーターがその対象になってしまったことを心から残念に思っています」
「それが多くの人々を傷つけてしまった。しかし、私たちは常に前を見て進まなければ、そしてできる限り、すべての物事が正しい場所に収まるよう努力しなければなりません。それゆえ、私はここで謝罪し、誰もこれ以上傷ついたり、裏切られたり、脅されたりしないよう、これらのページを抹消するための行動を取ります。今日私はクラブと話し合い、この不本意な一時に区切りをつけて、全員一丸となってひとつの目標、すなわちインテルの利益のために力を合わせることを誓いました。なぜならインテルよりも大きなものは何もないからです」
「そのために、私はクラブのすべての決定を受け入れました。今後は、チームにおける私の立場が要求する事柄に、もっとずっと大きな注意を払います。今、これまでにないほど結束した私たちは、次の戦いに向けて最大の決意を持って取り組んでいきます」
非常に回りくどい言い方になっているが、簡単に整理すると、ポイントは冒頭で触れた通り以下の3点になる。
・キャプテンマークは剥奪しない(ウルトラスの要求には応じない)。
・クラブは内規に従ってイカルディに処分(おそらく罰金)を下す。
・イカルディは自伝の内容に非があったことを認めて謝罪し、自伝を自費で回収。問題部分を削除した改訂版を発行する。
インテル・ウルトラスで最も影響力のあるボスの1人で、対外的なスポークスマンでもあるフランコ・カラビータは、この公式見解が出るよりも前に、ラジオ局のインタビューに対して次のようにコメントしていた。
「イカルディとの関係を修復することは不可能だと思う。我々を殺すと脅した人物だ。そんな輩と対話が成立するとは思えない。もしクラブがキャプテンマークを剥奪すると決めたのなら歓迎する。しかし我々は何の圧力もかけてはいないし、かけるつもりもまったくない。誰を脅迫したこともない」
また、ウルトラスの別の関係者はガゼッタ・デッロ・スポルト紙に対して、「イカルディとの関係を修復するつもりはないが、もし自伝を回収すれば彼に対する抗議行動はストップする」とコメントしている。
インテルとイカルディは実質的にこの要求を受け入れることで、ウルトラスの抗議がエスカレートする事態を回避する一方、キャプテンマーク剥奪という要求ははねつけることでマスコミからの批判もかわすという、苦しいながらもそれなりにバランスの取れた妥協策を見出したということになる。
当面は、ウルトラスとマスコミがこれに対してどんな反応をするのかが注目される。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。