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自己破産から15年…サッカーシューズの名門はいかにして甦ったのか? 喜びの声から生まれたビジョンとは――

カテゴリ:特集

手嶋真彦

2020年09月12日

最新モデルは木型と金型を一新。昔ながらのヤスダのスパイクに進化した素材や製法も採用

学生の頃ヤスダを愛用していた小川佳純(現FCティアモ枚方監督)。新潟時代にYASUDAのシューズを履いてくれた。(C) Getty Images

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 すでに先行予約を受け付けているYASUDAの最新モデルは、木型と金型がどちらも一新されている。狙いのひとつに軽量化があり、前作までと比べると60グラム軽くなる。

「たしかに履いてしまえば、わかりません。でも、こうやって持つと、ぜんぜん違います」

 代表取締役の佐藤は、最新モデルのサンプルを手にしたまま話を続ける。
「今回変えたのは、木型や金型だけではありません。それこそすべてです」

 理由は、明らかだろう。
「応援してくださるファンの皆様に、よく言われます。今度こそヤスダを潰さないでくれよって」

 生き残っていくためには、変化も必要だ。プロダクトディレクターの寺久保 要は、「進化」という言葉を使う。
「昔ながらのヤスダのスパイクに、進化した素材や製法をいかに採り入れて、今のニーズに合わせた製品を作っていくか。ソールに使う樹脂や、ソールとアッパーを貼り付ける接着剤も進化しています」

 試行錯誤の結果、到達したのが最新モデルで、ヤスダらしさを大切にしながら、細部にまでこだわり、進化を遂げていると言う。

 代名詞のオールカンガルーレザーにも、改良を施している。基本はカンガルーレザーのまま、靴ひもで擦れて摩耗しやすいベロ(シュータン)の素材は、より耐久性の高い牛革にした。ベロの内側と靴底(インソール)のかかと寄りは、滑り止めの機能を持つ豚革に素材を変更している。コストを考えても、高級品のカンガルーレザーを減らしたほうが原価は下がる。原価が下がった分、商品価格を安くできる。

 履き口周りには、ローバックスタイルを採用した。
「最近の主流は、かかとを高くして、アキレス腱まで覆うスタイルですが……」

 寺久保は、だからこそ、かかとを低くしたのだと話を続ける。
「かかとが高いと、足首までスポッと入ります。だからホールド感があって良いと評価する人も、逆にアキレス腱に当たって痛いと訴える人もいるんです」

 まだ成長途上で、とくに海外ブランドと真っ向から勝負するわけにはいかないYASUDAは、当面の狙いをニッチな需要に定めている。あえて主流の逆を行くローバックスタイルには、別のメリットもあると寺久保は言う。

「かかとが低い分、足首の可動域が広がりますから、ドリブルやフェイントでも、ディフェンスしながらでも、より踏ん張りが効くんです」

 競合他社との差別化は、ヤスダの伝統とYASUDAの独自路線を掛け合わせた“ハイブリッド”でも図ろうとしている。昔ながらのスパイクを、今風のサービスに乗せて、普及していこうとしているのだ。この9月から、スパイクの「サブスクリプション・リユース」という独自のサービスを開始する。

 サブスクのサービス利用者には、3か月ごとにYASUDAの新品のサッカーシューズが提供される。それまでのスパイクはYASUDAが回収し、まだ使えるものは再利用する。

 リユース(再利用)という発想も、実は「YASUDAらしさ」そのものだと佐藤たちは考えている。倒産したヤスダは、修理に力を入れていた。せっかく購入してもらったスパイクなのだから、是非、長く履いていただきたい、と。

 リユースできるスパイクは、いわゆるサッカー新興国の若者たちに届けられる。
「サブスクで戻ってきたスパイクは、一足一足、穴があいていないか、スタッドは残っているかなど点検します。まだ使えるものは清掃して、数がある程度まとまってから送ります」(佐藤)

 ゆくゆくは日本の恵まれない子どもたちのための施設にも、リユースのスパイクを提供していく構想を温めながら、まずはサッカー新興国に届けていくと言う。コロナの影響で見通しは立てにくくなっているが、伝手のあるバングラディシュから始める予定だ。

「サッカー新興国に送るのは、YASUDAというブランドを現地で浸透させていくためでもあります。その国に本格的に進出したとき、子どもたちが『あ、このスパイク知ってる』とか、親御さんが『リユースで使ってたんだ』とか――」

 佐藤が思い描いているのは、遠くない未来のそんな光景だ。
 
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