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【安永聡太郎】一発勝負のCLを見て感じた、日本と欧州の“広がる差”。あの舞台で活躍できる選手を育てるには――

カテゴリ:連載・コラム

木之下潤

2020年09月11日

鳥栖にはビジャレアルに似ている部分がある

この松岡大起など鳥栖はユースから優秀な人材をトップチームに送り込んでいる。(C)SOCCER DIGEST

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 九州スタイルのサッカーの中で、ドハマりした、すごく鍛えられたウイング崩れのサイドバックが生まれたらものすごい特徴だし、個性だし、才能だよ。たとえば、東北は冬時期に練習が難しいから屋内でプレーできるフットサルを取り入れ、ブラジルなどで生まれているような「足裏を使ったりするのが上手な選手」を鍛え上げたらいい。

 やっぱり静岡の子は「ずる賢いし、地頭がよくて最後の最後は負けないんだよね」というほうが育成の姿としては自然であるような気がする。地域柄というものを色濃くしていいと思うんだよね。もちろん今もスカウトで探すなら大枠では関東ではボランチから後ろとか関西ではアタッカータイプとかという部分はある。

 Jリーグでも鳥栖は近年それぞれのカテゴリーで結果を残してトップに選手を送り込んでいる。街の大きさや雰囲気を見ると久保の入ったビジャレアルに似ている気がする。期待したいし、もっと増えてもいい。

「真剣に考えなさい!」

 今大会のCLは、そういう風に大きな議論のテーマを突き付けられた気がした。結局、プロはそれぞれの場所で抜きんでた個性的な選手の集合体でなければいけないから。今日も中学校のトレーニングをしていて「チームのエースにシンプルにプレーさせることが良いことなのか」と考えていた。

 シンプルにプレーして周囲を生かしてあげなさい。

 これは“チーム”としては正しいのかもしれない。だけど、その子にとって自然な成長かと問われたら、僕は答えに詰まる。「シンプルにプレーする」ということの奥底に秘められている意味を理解できなければ、「ただ単に球離れをよくプレーしている」だけで本人が限界突破にチャレンジしているかどうかで言えば違うよね。その子にしたら「ボールをさばいていたらいいんだよね」と楽を覚えてしまう。
 
 たまにイベントや入団の選手選考会の審査をすることがあるんだけど、心がけているのは「無理やり良いところを見つけない」こと。

 直観的に目についた子が、やっぱり個性が抜きに出た才能をもった選手なのよ。ただ、最近はなかなか目に飛び込んでこない。ゲームシャツはJクラブ時代のもの、強豪街クラブ時代のものを着ているから見た目には「しっかりプレーできます」という雰囲気を持っている。しかし、そのゲームシャツを着ないでプレーしていたら違いがわかるかと聞かれたら、おそらく気づかない選手が多いんだよね。

 もちろん全員がプロになれるわけではないし、過去の実績を否定するものでもない。たとえば、日本では小学校4年生からトップに位置するクラブに所属していたとして「3-3-3」で最大9年間は在籍が可能。現状だと1年でクビを切られることは少ないので、「ジュニア→ジュニアユース→ユース」で3年間はそのクラブで指導を受けるのが一般的。そういう視点で選手を見ると、インプットはたくさんされたのだろうけど、自己表現としてのアウトプットの方法までは学べなかったんだと強く感じてしまう。

 おそらく指導者との出会いの中で、自分一人で勝手に小さな型を作って、そこからはみ出せない選手が多いんだと思う。型を破れない。しかも、その型がプロでも通用する個性の型ならまだしも、いわゆるオーソドックスなありきたりの当たり前の型だからね。選考会で審査していても、真新しいプレーを見せるわけじゃない。技術的には下手なんだけど、「ここだけは特にすごい」みたいなこともない。目に付かないし、面白みがないから良いところを探してあげる。

 あえてキツイ言い方をすると、「金太郎あめ製造工場なのかな?」って感じる部分は正直ある。自分の指導への戒め、そして発奮も含めて今回はCLへの道のりとして挑戦的な内容にしてみましたが、みなさんはどうお考えでしょうか?

分析●安永聡太郎
取材・文●木之下潤

【分析者プロフィール】
安永聡太郎(やすなが・そうたろう)
1976年生まれ。山口県出身。清水商業高校(現・静岡市立清水桜が丘高校)で全国高校サッカー選手権大会など6度の日本一を経験し、FIFAワールドユース(現U-20W杯)にも出場。高校卒業後、横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)に加入し、1年目から主力として活躍して優勝に貢献。スペインのレリダ、清水エスパルス、横浜F・マリノス、スペインのラシン・デ・フェロール、横浜F・マリノス、柏レイソルでプレーする。2016年シーズン途中からJ3のSC相模原の監督に就任。現在はサッカー解説者として様々なメディアで活躍中。
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