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【安永聡太郎】一発勝負のCLを見て感じた、日本と欧州の“広がる差”。あの舞台で活躍できる選手を育てるには――

カテゴリ:連載・コラム

木之下潤

2020年09月11日

まず日本が目指す方向性はCLよりELじゃないか?

ELでは6度目の戴冠を果たしたセビージャを筆頭にスペイン勢の躍進が目立つ。(C) Getty Images

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 現在、僕はジュニアユースと大学生を指導している。

 11人制の入口となる世代と育成としては最終期間となる世代の2つのカテゴリーを指導していて思うのは、「彼らをどう指導してあげるのが正しいんだろう?」ということ。CLの試合を見てしまうと、やはり行けるなら僕を含めてコーチは年に1回でもヨーロッパに指導の勉強に行ったほうがいいと感じる。

 現場に立っていても、現状「誤魔化せること」は多い。僕だって誤魔化すことは可能だし、それっぽい指導ができる。もちろんそれぞれの環境の中でできることをすればいい。それはわかっているんだけど、ひとりの指導者として「んー」と思い悩むのよ。

「日本人をあの舞台に立たせるためにJFAやJリーグが何をどう発信して、どれだけのものをCLから感じて育成から考え直していくか、みんなで取り組んでいくか」

 いろいろ想像して、個人的にはショックを受けている。複雑だし、難しいよね。戦術的な流れで見ていくと、フットボールには時代背景がある。たとえば、一つの戦術的な流れを作ったら次は「どうその戦術を打ち破るのか」という流れがある。今大会はアスリート能力の部分に焦点が当たったのは間違いない。でも、またアスリート能力を消すために「ゆったりとしたサッカーをしてくるようなチームが必ず現れる」はず。ただ、これまでのように単純な流れにはならない気がするけど。

 サッキやカペッロのゾーンプレス、ペップ(グアルディオラ)のゴールを目指すティキ・タカ、そしてドイツで生まれたゲーゲンプレス……。そういう流れの中で、トランジションの部分で規律正しくファイトできる戦術を煮詰めていったところに、現在は各国の主要選手が集まってくるプレミアリーグという場所にビッグマネーが集中している。

 さまざまな戦術家が各クラブに招聘され、イングランドという場所に元から存在したサッカースタイルと外部から入ってきた異なる価値のサッカーが融合して、今いろんなクラブがそれぞれのスタイルとして表現している。現在は間違いなくプレミアがフットボール発信の主流の中心になっている。

 リーガ好きの僕からするとスペインが淘汰されつつある。

 サッカーはどんどん進化するけど、最終的には人間がプレーするもの。だから、選手の標準装備自体のレベルが上がらなければ表現することはできないからアスリート能力が求められているのも流れだよね。その中で、マドリーはCLを3連覇しているから。モドリッチやクロースといったフットボーラーがいるけど、スペインでいえば彼らはアスリート能力に長けたチームだ。
 
 でも、冷静に歴史をさかのぼると過去に「アスリートチームではないクラブが優勝したことがあるのか」と問われたら、そうとも言い切れない。サッカーには、アスリート能力がなければ成り立たないポジションがあるし、「クライフのバルサにそういう選手がいなかったか?」と聞かれたらクーマンのような選手はいたわけで、その中にフットボーラーとしての能力でしか戦えないペップのようなボールを動かすような選手がいた。どのチームも、その集合体として成立しているからね。

 ある意味、CLはある一線を越えた選手の集まりでしかベスト4以上は狙えなくなっているのは事実ある。

 ヨーロッパリーグ(EL)とは違うからね。ELは、まだフットボーラータイプの選手の生き残る部分が多分に残っている。「アスリート能力が低いし、トランジションも遅い。でも、時々すごいプレーをするよな」という選手を、監督が戦術の中で上手に生かしている。決勝を戦ったインテルも、セビージャもそう。どちらにもすばらしく味のある選手がそろっていたけど、CLを勝ち抜けるかと言えば、ちょっと違う。

 フットボーラーという観点でいうと、ELではスペインのクラブがかなりの確率で準決、決勝まで勝ち上がってくる。言い方が適切なのかはわからないけど、現在の日本が参考にすべきものはELにあると、育成の部分では特に感じている。これはCLを見て学ぶなと言っているわけではないよ。
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