高額な違約金を払う気があったのはユーベだけだった。
もちろん、結果的にイグアインがナポリとそのサポーターを裏切ったのは事実だ。だが、9000万ユーロという巨額の違約金を全額支払って獲得しようというクラブが現われた以上、それを無下に断る理由がないことも事実だろう。実際、イグアインは後に、「これだけの金額を払っても自分を欲しいと言ってくれたのはユーベだけだ」と語っている。
そして、これは事実だ。
アトレティコ・マドリーは6000万ユーロ(約72億円)+ボーナスというオファーを出したが、ナポリは相手にすらしなかったし、アトレティコもそこからさらに条件を上げようとはしなかった。
アーセナルは仲介人を通しての打診だけで、正式なオファーは一度も出さなかった。条件は5000万~6000万ユーロ(約60億~72億円)+オリビエ・ジルーというものだったが、そこから具体的な話に発展することはなかった。
補強リストには入っていたものの、チェルシーもバイエルン・ミュンヘンもパリ・サンジェルマンも、実際にはまったく動いていない。正式なオファーを出したのはアトレティコだけだったのだ。
ナポリのキャンプに合流するはずだった7月23日土曜日、しかしイグアインはキャンプ地のディマーロには姿を見せなかった。そして、意外にもスペインから、「マドリードの某クリニックでメディカルチェックを受けた」という目撃情報が飛び込んできた。
私はそれを聞いた当初、土壇場で逆転してアトレティコへの移籍が決まったのかと思ったほどだ。
裏を取るためにアトレティコのアンドレア・ベルタSDに電話をすると、「そんなことはない」と否定する。そこで私はやっと、ユーベがタイムリミットぎりぎりに移籍を決めるために動き出したのだと覚った。
私はすぐにユーベのパラティチとジュゼッペ・マロッタGDに連絡して、「どうなっているんだ?」と問い質した。彼らは当初、メディカルチェックそのものを否定した。
そこで私が、「情報は確かだから、スカイスポルト24でアナウンスするがいいか?」と問い詰めると、「いまイグアインが契約書にサインするのを待っているところだから、表に出すのはもう少しだけ控えてくれ」と言う。
私もそれを受け入れて翌朝までスクープを控え、7月24日日曜日の朝10時過ぎに「イグアインがメディカルチェックを終えてユーベとの契約書にサインする」と報じた。
実際、イグアインはその朝4時ごろ契約書にサインを済ませていたのだった。
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016.09.01より加筆・修正。
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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そして、これは事実だ。
アトレティコ・マドリーは6000万ユーロ(約72億円)+ボーナスというオファーを出したが、ナポリは相手にすらしなかったし、アトレティコもそこからさらに条件を上げようとはしなかった。
アーセナルは仲介人を通しての打診だけで、正式なオファーは一度も出さなかった。条件は5000万~6000万ユーロ(約60億~72億円)+オリビエ・ジルーというものだったが、そこから具体的な話に発展することはなかった。
補強リストには入っていたものの、チェルシーもバイエルン・ミュンヘンもパリ・サンジェルマンも、実際にはまったく動いていない。正式なオファーを出したのはアトレティコだけだったのだ。
ナポリのキャンプに合流するはずだった7月23日土曜日、しかしイグアインはキャンプ地のディマーロには姿を見せなかった。そして、意外にもスペインから、「マドリードの某クリニックでメディカルチェックを受けた」という目撃情報が飛び込んできた。
私はそれを聞いた当初、土壇場で逆転してアトレティコへの移籍が決まったのかと思ったほどだ。
裏を取るためにアトレティコのアンドレア・ベルタSDに電話をすると、「そんなことはない」と否定する。そこで私はやっと、ユーベがタイムリミットぎりぎりに移籍を決めるために動き出したのだと覚った。
私はすぐにユーベのパラティチとジュゼッペ・マロッタGDに連絡して、「どうなっているんだ?」と問い質した。彼らは当初、メディカルチェックそのものを否定した。
そこで私が、「情報は確かだから、スカイスポルト24でアナウンスするがいいか?」と問い詰めると、「いまイグアインが契約書にサインするのを待っているところだから、表に出すのはもう少しだけ控えてくれ」と言う。
私もそれを受け入れて翌朝までスクープを控え、7月24日日曜日の朝10時過ぎに「イグアインがメディカルチェックを終えてユーベとの契約書にサインする」と報じた。
実際、イグアインはその朝4時ごろ契約書にサインを済ませていたのだった。
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016.09.01より加筆・修正。
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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