ひとり歩きした3000億円――新国立競技場の建設計画が迷走している理由

カテゴリ:Jリーグ

石田英恒

2015年06月19日

「日本の意思決定は遅い」とIOC会長も苦言。

建設費が3000億円と推定され、反対運動が巻き起こったザハ氏の新国立競技場の当初のデザイン。(C)日本スポーツ振興センター

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 さらに問題を複雑化させている要因として、下村文科大臣と舛添都知事の対立がある。
 
 先述したとおり、5月18日に下村文科大臣が舛添都知事と会談し、都に500億円の負担を要請し、それに対して、舛添都知事が反発するという事態が勃発したのだ。
 
 今回の国と都の工事費を巡る対立について、前出の都庁関係者はこう述べた。
 
「都知事が言う、“都が500億円を負担すべきというのは根拠のない話だ、国立競技場なので都がお金を出す必要はない”という発言は、一面では正しいようにも思えます。一方で、新国立競技場周辺には都有地があり、都有地にかかる整備、道路整備などは都が負担しなければならず、その整備を含め、50~100億円規模は必要でしょう。
 
 猪瀬(直樹)前都知事と文科省の間で建設費用に関するなんらかの合意はあったはずで、猪瀬前都知事から舛添現都知事に、上手く申し送りがされていなかったのではないか」
 
 遠藤議員も、「日本には8万人収容の巨大スタジアムがなく、元々オリンピックなどの国際スポーツ競技大会を行なえるスタジアムとして、現在の千駄ヶ谷の新国立競技場案と中央区晴海にメインスタジアムを建設するふたつの案があり、2016年オリンピック招致の際にはふたつのスタジアムを造る構想でした。
 
 しかし、ふたつでは費用が掛かり過ぎるのでひとつにしようということになった。
 
 当初の新国立競技場と晴海の2案がひとつになり、東京都が前向きに協力するという話は、石原(慎太郎)元都知事の時代からありました。そういう経緯からしても、ある程度、都が負担すべきではあると思います」と語っている。
 
 今回の東京オリンピック・メインスタジアムをめぐる騒動について、IOCのトーマス・バッハ会長が「日本の意思決定は遅い」と苦言を呈している。
 
 最も重要なことは、2019年ラグビー・ワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムである新国立競技場を、2019年3月までに竣工させることだ。
 
 もし、現状のザハ案が実現不可能であるならば、早めの変更、場合によっては撤回して新しい方針を明確にしなければならない。そして、国と都が話し合い、双方が納得できる案と費用で、一刻も早く決着する必要があるだろう。
 
取材・文:石田英恒(スポーツライター)
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